顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis:MPA)は,小型血管(毛細血管,細小動・静脈)を主体とした壊死性血管炎で,出血や虚血が生じる結果,皮膚,心臓,肺,腎臓,消化管,中枢・末梢神経など全身の諸臓器に障害をきたす疾患である。55~74歳に好発し,男女比は1:1である。年間発症率は100万人当たり18人で,患者数〔令和3(2021)年度医療受給者証保持者数〕は約1万人である1)。
発熱,体重減少,全身倦怠感などの全身症状に加えて,血管炎による臓器障害として,紫斑などの皮膚症状,関節痛,筋痛,糸球体腎炎(尿潜血,赤血球円柱,尿蛋白,血清クレアチニン上昇),多発性単神経炎,間質性肺疾患や肺胞出血を認める場合に本疾患を考える。主要な血液検査異常所見として,白血球・血小板数の増加,抗好中球細胞質抗体(MPO-ANCA)陽性がある。病理組織では,肉芽腫を伴わない細動脈・毛細血管・後毛細血管細静脈の壊死,血管周囲の炎症性細胞浸潤を認める。
本疾患は,小型血管を主とした血管炎であり,持続する血管の炎症は結果として諸臓器の出血や虚血を生じ,不可逆的障害をきたす恐れがあるため,可及的速やかに治療を開始することが望まれる。特に,肺胞出血や急速進行性糸球体腎炎の併発およびその進展は,予後不良となりえるため,早期からの適切な治療介入が望まれる。また,感染症も本疾患の主要な死因のひとつであるため,グルココルチコイドの積算投与量を減らす治療プランを検討する必要がある。本疾患に関する診療ガイドラインが2023年に国内で発刊されているので,参照されたい2)。
治療の組み立て方として,炎症の鎮静化を図る寛解導入療法と,再燃を予防する寛解維持療法にわけられる。
高用量グルココルチコイドの全身投与に加え,免疫抑制薬(静注シクロホスファミドパルスないしリツキシマブ)の併用を考慮する。静注シクロホスファミドパルスとリツキシマブの選択については,各薬剤の毒性,投与スケジュールなど個々の患者の病状に基づいて判断する。
シクロホスファミドやリツキシマブが使用できない場合には,メトトレキサートないしミコフェノール酸モフェチル(保険適用外)の使用を考慮する。
また,グルココルチコイドの代替薬として,静注シクロホスファミドパルスあるいはリツキシマブと併せて,アバコパンの投与を考慮する。
リツキシマブないしアザチオプリンを使用する。また,可能な限りプレドニゾロンの減量をめざす。
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