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愁訴の多い更年期症候群に対する漢方薬処方は?

No.5225 (2024年06月15日発行) P.50

飯塚徳男 (山口総合健診センター所長)

塩田敦子 (香川大学医学部健康科学教授)

登録日: 2024-06-18

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  • 愁訴の多い更年期症候群患者に対し,漢方薬でどのように対処すればよいのか苦慮することが多々ありますので,ご教示下さい。
    香川大学・塩田敦子先生にご解説をお願いします。

    【質問者】飯塚徳男 山口総合健診センター所長


    【回答】

    【病の語りを聴いて,女性の三大処方+αで心身への信頼感を取り戻してもらう】

    更年期は,社会的役割や人間関係の変化(子どもや夫婦の問題,親の介護,職場での行き詰まりなど)が起こる時期です。また,妊孕性,若さ,家族や友人,仕事,健康などを喪う時期でもあり,これまでがんばってきた自分への信頼感が損なわれることが多く,卵巣機能の揺らぎからくるストレス耐性の低下もあり,真面目な人ほど心身の不調を感じやすい時期です。

    ほてり,汗,不眠,イライラ,不安,疲労感,肩こり,冷え,関節痛……愁訴の多い更年期症候群にこそ,漢方の考え方,漢方薬のよさが活きてきます。訴えが多岐にわたろうとも,それは「証」を考える上での重要な症候であり,「不定愁訴」という考え方は漢方にはありません。時間的脈絡を中心に据えて,患者の体験としての経過を家族の歴史なども含め,丁寧に聴くことを心掛けると,「病の語り」としてそのストーリーが理解でき,「面倒な患者さん」でなく,「なんとかよくして差し上げたい患者さん」になります。

    自験例では,3カ月間103名の更年期女性に,漢方薬を78名(75.7%)で処方,34名(33.0%)では漢方薬のみでした。最も処方していたのは「加味逍遙散」で,「半夏厚朴湯」「桂枝茯苓丸(加ヨクイニン)」「補中益気湯」「柴胡桂枝乾姜湯」「柴胡加竜骨牡蛎湯」「抑肝散(加陳皮半夏)」「温経湯」「八味地黄丸」と続いていました。漢方薬は複数の生薬で構成される多成分系であり,1つの方剤で多くの症状が改善することが多く(異病同治),また同じ症状でも,その人の体質・気質や対処法の違いによって異なった方剤が効果的です(同病異治)。

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