イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃、ロシアによるウクライナ侵攻が続いている。これらの紛争地への支援を行っている認定NPO法人地球のステージ代表理事で心療内科医の桑山紀彦氏に、ガザ地区などの現状と日本の心のケアの課題を聞いた。
私たちは2003年にガザ地区南部のラファ市に事務所を置き、子どもたちの心のケアを約20年続けてきました。2016年から始まったプロジェクトでは、心のケアの対象を大人にも広げ、ラファに心理社会的支援センターを設立し、心のケアの担い手の育成などにも力を入れました。
実は、現地スタッフで運営できる体制が整ったことから、昨年3月にはガザでの活動を終え、他の紛争地の支援に重点を置く予定でした。ところが、昨年10月に今回の武力衝突が起こったため12月からガザへの支援を再開し、子どもたちへの心理的応急処置プログラムを始めました。既に報道されているようにラファも空爆されて、水や食べ物も不足し、電気も止まっていますが、子どもたちの心のケアは継続できています。現地スタッフのモハマッド・マンスールからは毎日、現地の様子を伝えるメールが届きます。
モハマッドに初めて会ったのは約14年前、彼が13歳のときでした。心のケアの一環として、他の子たちと一緒に空爆を受けた体験を絵に描いたのですが、彼の絵は真っ黒でした。色鉛筆を使わないのかと聞いたところ、「俺たちの街が空爆されて占領されたんだぜ。そんなひどい目にあった俺たちの街に色なんて塗れるか」と怒っていました。
彼は、心のケア終了後、ガザで起きていることを外の世界に伝えたいという夢を持つようになり、大学でメディアと経営学を学びましたが、ガザではメディア関連の仕事がありませんでした。今回の空爆では、彼が撮った写真が朝日新聞の一面に載るなど、ジャーナリストとしても活動しています。