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高齢者糖尿病でみられる老年症候群の食事・運動療法について

No.5232 (2024年08月03日発行) P.46

荒木 厚 (東京都健康長寿医療センター糖尿病・代謝・内分泌内科/フレイル予防センター長)

櫻井 孝 (国立長寿医療研究センター研究所長)

登録日: 2024-08-05

最終更新日: 2024-07-31

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  • 高齢の糖尿病患者では認知機能障害やフレイルをきたしやすいことが知られています。また,高齢者では食事療法や運動療法の実施が難しい場合もあります。糖尿病患者の認知機能低下を防ぐためのエビデンスに基づいた食事療法や運動療法と具体的な指導方法について教えて下さい。
    国立長寿医療研究センター研究所・櫻井 孝先生にご解説をお願いします。

    【質問者】荒木 厚 東京都健康長寿医療センター糖尿病・代謝・内分泌内科/フレイル予防センター長


    【回答】

    【食事療法と運動療法を組み合わせた指導により老年症候群の予防が期待できる】

    高齢者糖尿病の治療目標は,非糖尿病と変わらない生命予後と生活の質(quality of life:QOL)を達成することです。近年,糖尿病の薬物療法には選択肢が広がっていますが,高齢者ではポリファーマシーにも注意が必要で,食事療法,運動療法の重要性は言うまでもありません。

    本稿では,高齢者糖尿病でみられる老年症候群,特にフレイル・サルコペニアや認知症を予防する視点から,食事療法・運動療法の意義について述べたいと思います。

    高齢者糖尿病でも,適正な総エネルギー摂取とバランスのとれた食事療法は,高血糖,脂質異常症,肥満の是正に有効です1)。わが国の高齢者糖尿病では,高度の肥満(過栄養)より,低栄養に関する注意が必要であることが多いです。総エネルギー摂取量は,年齢を考慮した目標体重と身体活動レベルと病態によるエネルギー係数から算出します。目標体重は高齢者では[身長(m)]2×22~25,75歳以上の高齢者では現体重に基づき,フレイル,ADL低下,併存疾患,体組成,身長の短縮,摂取状況や代謝状態の評価をふまえ柔軟に判断します1)。蛋白質の摂取不足はフレイルやサルコペニアのリスクとなります。筋力・筋肉量の維持のために,1.2~1.5g/kg実体重/日の蛋白質摂取が推奨されています。ビタミンB群,ビタミンA,緑黄色野菜,n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取不足は認知機能低下と関連するため,多様性の高い食事パターンが勧められます。

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