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「越境」から考えるプライマリ・ケア―「後追い」からしぶとく始めること[プライマリ・ケアの理論と実践(200)]

No.5232 (2024年08月03日発行) P.14

宮地純一郎 (名古屋大学医学系研究科総合医学教育センター特任講師/浅井東診療所)

登録日: 2024-08-01

最終更新日: 2024-07-31

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SUMMARY
2040年に向けてプライマリ・ケアに持ち込まれる課題はさらに広く,未知のものになることが予想される。その中で経験しうる「越境」を多角的にとらえることが,その広がりを知るための鍵となりうる。

KEYWORD
越境
ある人が,それまで馴染んでいたやり方とは異なる他者の活動や,自分のやり方では限界を感じるような課題に遭遇しながら,新たな活動を模索・展開すること1)

宮地純一郎(名古屋大学医学系研究科総合医学教育センター特任講師/浅井東診療所)

PROFILE
大阪大学卒。地域医療振興協会「地域医療のススメ」,北海道家庭医療学センター・フェローシップ修了。現在は,名古屋大学総合医学教育センターでの卒前医学教育と研究,2012年から勤務している滋賀県長浜市・浅井東診療所での診療・教育に携わっている。

POLICY・座右の銘
一隅を照らす

1 包括性に向けた「後追い」としてのプライマリ・ケア

プライマリ・ケアは,この連載が象徴するように,病気と健康に関わるあらゆることが持ち込まれ,論じられる領域になりつつある。そこには個別の症候・疾患・病態にとどまらず,多疾患併存状態,支援者自身までも考察の射程に含める必要がある健康の社会的決定要因,そして,ジェンダー,経済,気候変動のように,従来は医療の外とされてきたが,医療との関係が再考されるに至ったトピックまで含まれる。

この広範な課題に取り組む姿勢(包括性)は,プライマリ・ケアにおける理想像として語られがちだが,個人や単一の医療機関が事前に準備し,達成できる限度を超えていると言っても差し支えない。また,生活を取り巻く社会・環境・技術が変わり続ける以上,新たな出来事が無限に持ち込まれ続ける(新型コロナパンデミックはその一例と言える)。ある意味,我々は,この包括性に対して常に「後追い」の状況になっている,と言える。

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