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■NEWS 【欧州心臓病学会(ESC)】MR拮抗薬でHFmr/pEF例の「CV死亡・全HFイベント」が有意減少:RCT"FINEARTS-HF"

登録日: 2024-09-06

最終更新日: 2024-09-06

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ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬は、左室機能軽度低下心不全(HFmrEF)と左室機能維持心不全(HFpEF)に対する心血管系(CV)転帰改善作用が、ランダム化比較試験(RCT”TOPCAT”の後付解析から示唆されている[Pfeffer MA, et al. 2015]。そのため確認が待たれていたが、8月30日からロンドン(英国)で開催された欧州心臓病学会(ESC)学術集会では、この点を非ステロイド型MR拮抗薬であるフィネレノンで検討したRCT"FINEARTS-HF"が報告され、同薬による「CV死亡・全心不全(HF)イベント」抑制作用が認められた。

興味深い亜集団データ、当日のやり取りを含め紹介したい。

【対象】

FINEARTS-HF試験の対象は、「左室駆出率(LVEF≧40%」で「症候性」HFのうち、さらに①基質的心疾患と②NT-proBNP高値(≧300pgmL、心房細動例では≧900pgmLEMPEROR-Preserved試験と同じ])を認め、③利尿薬治療を要した6016例である。ただし「血清カリウム≧5.0mollL」、「eGFR<25mL/分/1.73m2」例などは除外されている。

世界37カ国の635施設から登録された(最多は中国の428例、次いで米国の355例、スペイン353例、ウクライナ327例、ロシア300例など)。平均年齢は72歳で、女性が約45%を占めた。

HYHA分類は「Ⅱ」が最多で69%。「Ⅲ」が30%だった。LVEF平均は53%NT-proBNP濃度は中央値で1000pgmL強だった。また60%HF入院既往があった。治療薬はループ利尿薬、β遮断薬、レニン・アンジオテンシン系阻害薬(含ARNi)とも8割以上で用いられていた。

「典型的なHFmrpEF患者だ」とSolomon氏は評価した。

【方法】

これら6016例をフィネレノン群とプラセボ群にランダム化し、二重盲検法で観察した。フィネレノンの目標用量はeGFR≦60mL/分/1.73m2なら20 mg、それ以外は40 mgとされた。

1次評価項目は「CV死亡・全HFイベント」である。「HFイベント」の内訳は「HF入院」と「HFによる救急受診」。初回だけでなく全発生が評価対象となった。最終的な解析対象は上記6015例からランダム化不備などを除いた6001例である。

【結果】

・1次評価項目

32カ月(中央値)の観察期間後、1次評価項目の「CV死亡・全HFイベント」リスクは、フィネレノン群でプラセボ群に比べ相対的に16%の有意低値となっていた(ハザード比[HR]:0.8495%CI0.74-0.95)。両群のカプランマイヤー曲線は試験開始直後から乖離を始め、18カ月程度まで差は開き続けた(その後はほぼ平行)。 

・CV死亡

ただしこの差はほとんどが「全HFイベント」によりもたらされた。2次評価項目である「全CVイベント」を除いた「CV死亡」は両群間に有意差を認めず、フィネレノン群におけるHR0.9395%CI0.79-1.11)だった。

Solomon氏はこの結果を記者会見において「発生数が少ないため検出力が不足していたため」と説明。より大規模・長期間の検討を実施すればCV死亡でも有意差が観察されるとの見解を示した。なお、両群の「CV死亡」カプランマイヤー曲線が乖離し始めたのはおよそ16カ月を経過した後で、両群間の差は小さく、(例数が少ないこともあり)試験終了に向かい差は縮小する傾向が見られた。

・SGLT2阻害薬の有無

事前設定された亜集団のいずれにおいても、フィネレノンによる「CV死亡・全HFイベント」抑制作用は一貫していた。特にランダム化時点におけるSGLT2阻害薬併用の有無も、フィネレノンの「CV死亡・全HFイベント」抑制作用には影響を与えていなかった(14%SGLT2阻害薬を服用)。

またSolomon氏によれば、試験開始後にSGLT2阻害薬を開始した例を含めて解析しても同様の結果だったという。「SGLT2阻害薬に対し相加的作用があると考えている」とのことだ。

・NYHA分類とQOLの改善

一方、3次評価項目の1つである「試験開始1年後にNYHA分類が改善された例の割合」は、フィネレノン群(18.6%)とプラセボ群(18.4%)で差を認めなかった。ただしもう1つの3次評価項目である「1年間KCCQ-TTS改善幅」は、フィネレノン群で有意に大きかった(8.0 vs. 6.4)。

・安全性

高カリウム(K)血症発現頻度はフィネレノン群で9.7%とプラセボ群(4.2%)に比べ高い傾向にあったが、「入院を要する高K血症」はそれぞれ0.5%0.2%のみだった。

【考察】

質疑応答ではある亜集団解析にスポットが当たった。

本試験では「近時HF入院既往例」も参加可能だった。そこでHF入院からランダム化までの期間が「7日以内」(642例)、「7日~3カ月」(896例)、「3カ月超、またはHF入院なし」(828例)の3群に分け、フィネレノン群における「CV死亡・全HFイベント」HRを調べた。その結果、HF入院から「7日以内」例では0.74の有意低値だったのに対し、「7日~3カ月」では0.79と減弱し、「HF入院から3カ月超、またはHF入院なし」では0.99NS)となっていた。

質問者は低リスク例に対する有用性に疑問を感じたようだ。これに対するSolomon氏の回答は、これら3群間に有意なバラツキは統計学上認められなかったというものだった。なおSGLT2阻害薬をHFmrpEFに用いたDELIVER試験では、このような傾向は見られない。

本試験のさらなる解析は、9月27日から始まる米国心不全学会で報告予定とのことである。より詳細なデータが待たれる。

FINEART-HF試験はBayer社から資金提供を受けて実施された。同社は試験デザイン設計にも関与し、最終著者を含む5名の社員が著者に名を連ねた。

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