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糖尿病の食事療法[私の治療]

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  • ▶治療の実際

    【妊婦以外の糖尿病患者】

    一手目 1食当たりの糖質を20g以上40g以下とし1日3食,また,嗜好品(間食)も摂取(1日当たり10gの糖質)するよう指導する

    肉や魚はほとんど糖質を含まないため「おなかいっぱい食べなさい」という指導でよい。野菜は1食当たり120g程度摂取して糖質20g弱であるが,その量を摂取している日本人は少ない。よって,主食から摂取する糖質を20g(日本糖尿病学会「糖尿病食事療法のための食品交換表」表 1で1単位分)にすれば,おかずは「おなかいっぱい食べなさい」という指導でよい。


    二手目 〈上記指導でHbA1cが改善しない場合〉食事記録(記憶)から,糖質含有量の豊富な食材を見出し,それをよく似た低糖質の食材に変更するよう指示する

    できるだけ元来の食習慣を維持させるようにする。また,白米でおかずの食塩を中和させている患者は,おかずの食塩を制限しないと主食を減らせない。いわゆる“ご飯の友”と称される食品は高塩分食と考えてよい。

    【耐糖能異常を合併する妊婦】

    一手目 【妊婦以外の糖尿病患者】と同様でよい

    二手目 〈HbA1cが改善しても高ケトン血症を伴う場合〉糖質摂取を増やすよう指導する。それにより食後血糖値が悪化するのであればインスリン療法を検討する

    ただし,耐糖能異常妊婦への食事療法として世界的に確立されたものはない。患者が希望し,食欲に問題がなく,かつ児の発育に問題がなければ,ケトン産生を必ずしも忌避せねばならないというわけではない1)

    ▶偶発症・合併症への対応

    ゆるやかな糖質制限食で特定の有害作用が生じることはないが,以下の状況はありえる。

    【尿素窒素が30mg/dL超】

    摂取蛋白質の脱アミノ基反応が高まっている可能性がある。脱水など他の要因が否定的ならば脂質を積極的に摂取するよう指導する。

    【血中ケトン体が極端に上昇(1mmol/L超など)】

    極端な糖質制限をしている可能性がある。糖質制限の生活を楽しめずに耐えているのであれば,糖質制限をゆるめ,食生活を楽しむよう指導する。SGLT2阻害薬を投与している場合は中止もしくは減量する。

    ▶患者への説明のポイント

    ゆるやかな糖質制限を指導する際,同時にエネルギー制限,脂質制限,蛋白質制限をしないように指示する。エネルギー制限を我慢して行っても体重減量は維持できないこと,脂質制限食群で動脈硬化症は予防できないこと2),蛋白質制限に慢性腎臓病予防効果はなく死亡率上昇の可能性があること3)も説明しておくべきである。

    また,ゆるやかな糖質制限食を実施できないという患者には,塩辛があると白米に乗せたくなるという例を挙げ,糖質制限のために食塩制限が必須となる場合があることを説明する。すると「薄味にするのですね?」と言う患者もいるが,油脂(バターやマヨネーズ,ノンオイルではないドレッシング)で味付けをするように指導する。

    さらに,合成甘味料を使用した菓子を積極的に摂取するよう指示し,日々の食生活を最大限楽しむよう努力を求めるとよい。我慢は続かないが,生活を楽しむための努力は継続できる確率が高い。

    【文献】

    1)Tanner HL, et al:Diabetes Care. 2021;44(1):280-9.

    2Noakes TD:Open Heart. 2021;8(2):e001680.

    3Yamada S:Diabetology. 2021;2(2):51-64.

    山田 悟(北里大学北里研究所病院院長補佐/糖尿病センター長)

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