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副腎不全(副腎クリーゼを含む)[私の治療]

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  • ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    治療の基本は,不足しているグルココルチコイドの補充(場合によってはミネラロコルチコイドも)である。

    副腎クリーゼにみられる症状には何ひとつ特異的なものがないので,意識障害,ショックの症例に接したときには,その可能性を頭の片隅に置いておくことが大切であり,他の原因や急性腹症をきたす疾患などと鑑別する。問診・診察に加え,低Na,好酸球増多症など,副腎クリーゼが疑われたら,血中コルチゾールの検査結果を待たず,直ちに治療を開始する。

    ▶治療の実際

    【慢性期】

    生涯にわたって補充する必要性と疾患予後の観点から,生理的なコルチゾール分泌量(健常成人の推定1日産生量9~11mg/m2)と日内変動に沿った至適補充療法が望ましい。

    一手目 コートリル10mg錠(ヒドロコルチゾン)1日1.5錠分2~3(2回の場合は朝10mg・夕5mg,3回の場合は朝7.5mg・昼5mg・夕2.5mg)

    二手目 〈低血圧が続く場合,一手目に追加〉フロリネフ0.1mg錠(フルドロコルチゾン酢酸エステル)1回0.5~1錠1日1回(朝食後)

    【副腎クリーゼ時】

    一手目 速やかに,生理食塩水500~1000mL/時の速度で点滴静注(心機能監視下)すると同時に,水溶性ハイドロコートン注(ヒドロコルチゾンリン酸エステルナトリウム,以下HC)100mgを静注後,5%ブドウ糖液中にHC 100~200mgを混注した溶液を24時間で点滴静注(あるいはHC 25~50mgを6時間ごとに静注)

    二手目 〈一手目に追加〉細胞外液量減少と低血糖に対し,十分な補液と電解質の補正を行うとともに,副腎クリーゼの引き金となった原疾患に対して,昇圧薬,抗菌薬などを投与する。ただし,急性期治療に伴い血清Na濃度が急速に回復すると浸透圧性脱髄症候群のリスクとなるため,慎重にモニターする

    ▶患者への説明のポイント

    感染症による発熱時,抜歯,強い運動などのストレス時には2~3倍に増量する旨を繰り返し指導しておく。緊急時に備え,病名・ステロイド内服量・処置・連絡先を記載した緊急時用のカードを携帯するように指導する。

    【参考資料】

    ▶ Stewart PM, et al:Chapter 15 The Adrenal Cortex. Williams Textbook of Endocrinology. 13th ed. Melmed S, et al, ed. Elsevier, 2015, p524-33.

    ▶ 日本内分泌学会, 他:日内分泌会誌. 2015;91(Suppl Sep.):1-78.

    宗 友厚(川崎医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科学教授)

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