皆さま,新年明けましておめでとうございます。晴々とした気持ちで新年の原稿を書いております。2022年4月から始まった本連載ですが,多くの方が苦手にされている心電図に関して,“どこよりもわかりやすく丁寧に”をモットーに基本から応用まで解説してきました。4年目のシーズン突入も見えてきましたが,引き続き頑張っていく所存ですので,御愛顧どうぞよろしくお願い申し上げます。2025年1月の2回は,【前編】【後編】として2024年の振り返りから始めたいと思います。
2024年は,“心電図の父”であるアイントーベン(Willem Einthoven)先生がノーベル生理学・医学賞を受賞して,ちょうど100年の節目に当たる年でした。そんな年に『Dr.ヒロの学び直し! 心電図塾』は,心電図誘導の世界観(No.5202,第42回参照)から徐脈頻脈症候群【後編】(No.5252,第65回参照)までの計24回の熱い講義をお届けしました。以下のダイジェストも参考にしながら,実際のレクチャーを振り返って頂くとよい復習になるかと思います。
2024年1発目は,12誘導の“視点”と題して,現在の標準的な誘導システムが意味する方向性に関して解説した心電図誘導の世界観(No.5202,第42回参照)でした。もともと単極誘導と見なせる胸部誘導だけでなく,考え方を工夫することで肢誘導にも“単極”的な視点が導入できる点がポイントです。
要は,心臓の電気活動を周囲12方向から眺めて記述(表現)したものと理解することで,単なる“暗号”的な波形でなく,心電図に意味(解釈)が生まれるということになります。
胸部誘導を左室壁の部位と対応させる方法の理解はマストです。CTを用いて各誘導の位置関係を示した図は見直しておいて下さい。
肢誘導に関しては,少し遠巻きからの“方角”的な感じで左室を中心とする心臓を眺めていると考えればよいと思います。これらの知識を取り入れることで,「前壁」や「下壁」,「側壁」の心筋梗塞の診断における誘導分布が理解できると思います。なお,補助誘導として右側胸部誘導など*1に関しても明示していますので確認しておきましょう。
“視点”に関係した“方向性”という点に関連して,カブレラ形式(配列)(No.5212,第47回参照)が紹介できたのも,2024年の収穫でした。個人的にはこの用語自体は,循環器専門医以外ですと,無理に暗記しなくてもよいと思います。しかしながら,内容とも関連する,aVl(-30°)→Ⅰ(0°)→-aVr(+30°)→Ⅱ(+60°)→aVf(+90°)→Ⅲ(+120°)〔→-aVl(+150°)〕の順番は,各誘導が担う角度の把握とともに重要だと思います。
このように,心臓を半周グルッと囲うことの最大の利点は,「ST上昇型心筋梗塞」の診断において,下側壁領域の解剖学的な位置関係が把握しやすくなることでした。副次的に,QRS電気軸の計算にも生かせます。後述する“トントン法”や“トントン法NEO”いずれの手法でも,カブレラ形式(配列)の順番でQRS波の極性変化を連続的に眺めていくテクニックが登場します。この手法は絶対にオススメです。
*1 残る背(側)部誘導に関しては,2025年のどこかのタイミングで取り上げようと思います。