【概要】新専門医制度を巡り、医師の地域偏在を助長する懸念を払拭するための動きが進んでいる。日本専門医機構は、厚労省部会、委員会での議論を随時反映する条件付きで今年度の事業計画を決定。一方、厚労省委員会では永井良三委員長(自治医科大学学長)が私案を発表した。
日本専門医機構は4月25日、社員総会を開き、3月の前回総会で見送られた2018年度の事業計画と役員選任規定を了承した。事業計画については、厚生労働省の社会保障審議会医療部会、専門委員会における地域医療への影響に関する議論を踏まえ、随時見直すことを条件に了承された。
社員総会終了後には会見を開き、新専門医制度開始の延期を求める意見が社保審で出ていることについて池田康夫理事長が「各学会が非常に努力をされ、専門研修プログラムの準備も進んでいる。ここで延期すると逆に大混乱を起こす。新専門医制度の研修を来年度開始できるよう全力で努力したい」と強調。地域医療への配慮については小西郁生副理事長が「各研修プログラムは、直近の採用実績に応じて大都市であまり定数を増やさないように数を調整しようとしている」と述べ、機構が調整能力を発揮する考えを表明した。
■次回会合で厚労省が都道府県の定員枠を試算
27日には社保審医療部会第2回専門医養成の在り方に関する専門委員会が開かれた。ここで永井委員長が私案(表)を発表。このうち1,2は将来の検討課題の位置づけで、来年度の対応は3の後半で言及。「当面は従来通り各学会が専門医養成プログラムに関し中心的役割を担うこととして試行的に(新専門医制度を)運用してはどうか」とした上で、採用実績の1.1~1.2倍を都道府県の定員枠とし、都市部以外に配慮することを提案した。
現在、基本領域の学会は新しい研修プログラムを準備しているため、「延期」議論の行方にかかわらず、実際には現在2年目の初期臨床研修医は各学会のプログラムから来年4月以降の後期研修の場を選ぶことになる。そのため私案では、新専門医制度を「試行的に運用」と曖昧な表現になっている。
私案の方向性について複数の委員が賛同。次回会合では厚労省が私案に基づき、診療領域ごとの都道府県の定数を試算することになった。
同日は、都道府県内の偏在を調整する協議会の運営状況(4月22日時点)を厚労省が報告。熊本県以外の46都道府県で設置されているものの、開催回数は0回が23、1回が18、2回が1、3回が2、5回が2とバラツキが見られた。