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医師の健康管理は医療機関の「社会的責任」だ [お茶の水だより]

No.4788 (2016年01月30日発行) P.9

登録日: 2016-01-30

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▼経済産業省が日本再興戦略による取り組みの一環として東京証券取引所と共同で選定している「健康経営銘柄」の2016年の選定企業が発表された。健康経営銘柄とは、従業員等の健康管理を経営的視点で考え戦略的に実践することで、従業員の活力・生産性向上など組織の活性化と業績・企業価値の向上を目指す企業への、言わば国のお墨付き。同取引所の上場企業から業種区分ごとに選定された25社のうち、医薬品業種からは塩野義製薬が初選定された。
▼事業主・産業医・健保組合が共同で進める社内禁煙やレセプトデータを用いた疾患の重症化予防等の取り組みが評価された。「人々の健康を守るために必要な最も良い薬を提供する」という企業理念の下、今後も従業員・家族の心身の健康増進の取り組みを「社会的責任」として果たしていくという。
▼「薬」を提供する企業に対し、人々の健康を守るために必要な「医療」を提供しているのが医療機関。従業員である医師の健康増進に関する取り組みの状況はどうか。学会の調査で、産婦人科勤務医の月平均拘束時間(オンコール等を含む)が372時間に上ることが明らかになるなど、法令基準を大幅に超えて働く医師は多数存在し、過重労働による健康障害や過労死・労災認定も稀ではなくなっている。しかし患者から見て、手術の執刀医が前日寝ているとは限らない、健康障害を抱えているかもしれないという状況はなかなか受け入れがたいものだ。
▼一朝一夕に解決できない日本の医療の構造的問題ではあるが、医師の健康管理を「経営的視点」で考え戦略的に実践するのは「社会的責任」であり、それが医療の質の確保・向上の取り組みとして評価され、患者に選ばれる価値にもつながるとの視点が、医療界、行政ともに必要なのではないか。

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