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結核発症に伴う生物学的製剤中断で再燃・増悪したRAへの対処

No.4769 (2015年09月19日発行) P.61

亀田秀人 (東邦大学医療センター大橋病院 膠原病リウマチ科教授)

登録日: 2015-09-19

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

結核は,関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)に対する生物学的製剤治療時の重要な有害事象です。日本リウマチ学会の生物学的製剤使用に関するガイドライン(複数)は,そのいずれにおいても潜在性結核に対するスクリーニングの徹底や予防内服の必要性を示しています。しかし,スクリーニング法の不完全性や新規結核感染により,生物学的製剤治療中に活動性結核が一定頻度で発生しています。
ガイドラインには「生物学的製剤は活動性結核患者には投与禁忌とし,活動性結核の治療を優先し,治癒を確認後に生物学的製剤の投与を行う」旨書かれていますが,活動性結核に対しては少なくとも6~9カ月間の化学療法が必要です。この期間の生物学的製剤中断により,多くの場合,RA活動性の再燃をまねきます。生物学的製剤治療を受けている患者さんは基本的にはメトトレキサート抵抗性です。生物学的製剤中断によりRAが再燃・増悪した場合の対処について,東邦大学医療センター大橋病院・亀田秀人先生のご教示をお願いします。
【質問者】
森 俊輔:国立病院機構熊本再春荘病院リウマチ臨床研究センターリウマチ科部長

【A】

幸いなことに私自身あるいはこれまでの所属施設では,生物学的製剤投与中のRA患者さんにおける結核を経験していません。
結核の治療転帰が患者さんの免疫状態と菌種の薬剤感受性に依存することに鑑みて,生物学的製剤治療が当該患者の結核の発症に関与したなら,結核治療の妨げにもなるという推定のもとに日本リウマチ学会のガイドラインには記載されています。一方で,生物学的製剤の中止に伴う免疫のリバウンド(免疫再構築症候群)がRAのみならず結核の転帰に悪影響を及ぼす可能性も指摘されています(日本呼吸器学会「生物学的製剤と呼吸器疾患 診療の手引き」)。
したがって,生物学的製剤の中止からあまり時間をあけずに,結核治療に及ぼす影響が比較的少ないRAの代替治療薬を開始・併用することが最も重要です。BuSHIDO試験の結果からも,寛解導入よりも寛解維持のほうが,従来型合成抗リウマチ薬で対応しやすいと考えられるからです。
ただし,抗結核薬も3~4剤併用されますので,薬物相互作用や副作用への十分な配慮が必要です。さらに,結核の治療反応性(免疫状態と薬剤感受性の双方を反映)が良好で,RAの再燃・増悪が従来型合成抗リウマチ薬でコントロールできない場合に限って,生物学的製剤再開の前倒しを慎重に検討してもよいと思います。

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