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可溶性インターロイキン-2レセプター(sIL-2R)で悪性腫瘍 の診断は可能か

No.4699 (2014年05月17日発行) P.63

辻岡貴之 (川崎医科大学検査診断学講師)

通山 薫 (川崎医科大学検査診断学教授)

登録日: 2014-05-17

最終更新日: 2018-11-27

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【Q】

血液検査で可溶性インターロイキン-2レセプター(sIL-2R)はリンパ系の腫瘍の発見や再発の診断に使われるが,悪性リンパ腫(malignant lymphoma:ML)の診断法として利用できるか。sIL-2Rが極端な高値をとる場合はMLと断定してよいか。また,T細胞,B細胞系をある程度診断できるか。 (埼玉県 N)

【A】

sIL-2Rは臨床の現場において,血液腫瘍,特にMLを疑う症例に対して測定されている。本検査のみでMLの確定診断が可能かという質問は他科の医師からもよく受けるが,筆者らは否定的な考えを持っている。
以前当院の症例(ML443例vs.非血液疾患症例1278例)を用いて初診時にsIL-2R値を測定し,どのくらいの数値であればMLと確定診断できるかを調べたことがある(文献1)。結果は,非血液疾患群と比較してML群のほうが有意差を持って高値であった〔ML:中央値1330U/mL(197~84200U/mL)vs.非血液疾患:中央値827U/mL(106~18100U/mL),P<0.001〕。その中でも,最も高値であったのは成人T細胞性白血病/リンパ腫〔中央値12400U/mL(607~84200U/mL)〕であったが,それらの症例を除いても,T細胞性リンパ腫はB細胞性と比べ高値を示した〔T細胞性:中央値4415U/mL(274~59400U/mL)vs. B細胞性:中央値1220U/mL(197~52300U/mL),P< 0.002〕。また,進行期であるほどsIL-2R値は高い傾向にあった。
一方,非血液疾患群では自己免疫疾患,非血液腫瘍,感染症,不明熱,リンパ節腫大の症例においてよく測定されていた。このうちsIL-2Rが3000U/mL以上を示す症例が8%を占めた。5000U/mL以上の症例も2%程度存在した。2群に対するsIL-2R値のカットオフ値を高く設定していくと,ML確定診断に対するオッズ比(カットオフ値500U/mLで1.714,5000U/mLで11.195)や尤度比(カットオフ値500U/mLで1.118,5000U/mLで8.825)が上昇した。また,白血球数,LDH値,CRP値を加えることによりMLの診断確度は上昇した。
以上の結果から,sIL-2R値が高い症例ほどMLと診断される確率が高いということは言える。しかし,非血液疾患症例でも,sIL-2R値が非常に高くなる症例(当院では劇症肝炎18100U/mL)が存在し,重症感染症を併発した症例でも相当数高値の症例を認めた。したがって,高値によって診断確度は高まるが,確定診断は難しいと言わざるをえない。
今の時代においても組織生検の重要性は普遍的なものであり,sIL-2Rはあくまでそれを補助する存在でしかない。文献的には,予後との関連を解析したものや,単一疾患で高値を示す症例の報告はあるが,どのくらい高値で確定診断できるかを述べた論文は筆者らが検索した範囲では認めなかった(文献2~4)。sIL-2R値高値の患者に遭遇した場合はMLを疑いつつも,他疾患の合併がないかを必ず検証する必要がある。そのためには画像診断が必須であるし,確定診断はあくまで生検による組織診断である。

【文献】


1) Tsujioka T,et al:Kawasaki Medical Journal. 2011;37(1):19-27.
2) Kono N,et al:Leuk lymphoma. 2000;37(1-2): 151-6.
3) Goto H,et al:J Cancer Res Clin Oncol. 2005; 131(2):73-9.
4) Oki Y,et al:Leuk Lymphoma. 2008;49(7):1345-51.

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