株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

ダイエットや糖尿病における糖質制限

No.4743 (2015年03月21日発行) P.63

島野雄実 (よこはま北星クリニック理事長)

登録日: 2015-03-21

最終更新日: 2016-10-18

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【Q】

最近,本や雑誌などで炭水化物を減らすといいとか,有酸素運動がいいと記載がある一方で,炭水化物を減らすと長期では良くない,有酸素運動はしなくていい,ビールは飲んで食事も多く,など反対のことを書いた記事もある。何が本当か今ひとつ理解できない。
ダイエットにおける糖質制限について,最新の指導,考え方など。 (福岡県 K)

【A】

ご指摘の通り,ダイエットあるいは糖尿病改善を目的とした「糖質制限」という言葉を頻繁に耳にするようになった。外来診療においても,特に糖尿病の患者が,糖質制限をしている旨を口にすることも多い。以下,糖質=炭水化物として述べる。
糖質制限についてはアトキンス・ダイエット,バーンスタイン・ダイエットなどが過去においても検討されており,特に新しい方法というわけではない。バーンスタイン・ダイエットは,1日当たりの糖質摂取を130g程度に抑える糖質制限の方法を指し(文献1),実際に糖質の制限が体重減量に効果があることが報告されている(文献2)。
そもそも糖質制限という言葉には,制限の程度が含まれていないことが,混乱を招いている。すなわち,糖質ゼロも制限の一方法であるし,糖質を少し減らすだけでも制限と言えるわけである。「糖質ゼロ」などの極端な制限は,日本糖尿病学会でも糖尿病治療の方法としては推奨していない。実際に糖質を極端に制限し,ほかは何を食べてもよいとした場合にLDLコレステロールが上昇するとの報告がある(文献2)。
また,糖質摂取を1食当たり20g以下に制限するアトキンス・ダイエットにおいて,死亡例の報告があることから(文献3),筆者らの肥満外来においても極端な糖質制限は推奨していない。さらに,低血糖とうつ状態との関連についても数多くの指摘があることから(文献4),現時点では極端な糖質制限は避けるべきであろう。
一方で,適度な糖質の制限は上記のように糖尿病の改善にも効果が認められるほか,何より簡便であることから,食事療法の継続が期待できる。筆者らの肥満外来でも,糖尿病や肥満症の患者において,糖質摂取が過剰である例においては摂取栄養素のバランスをとるために糖質を制限する。このような例では,耐糖能障害のほかに,高中性脂肪,脂肪肝,さらに低蛋白血症を伴う事例も多く,治療の上では,ある程度の糖質の摂取制限を行い,蛋白質および繊維質を多く摂取するよう促すことが多い。
今後,糖質制限の方法やその程度,制限の期間,さらに安全性などを明らかにするための研究が進められることが期待される。

【文献】


1) Accurso A, et al:Nutr Metab. 2008;5:9.
2) Shai I, et al:N Engl J Med. 2008;359(3):229-41.
3) Chen TY, et al:Lancet. 2006;367(9514):958.
4) Shao W, et al:Curr Med Res Opin. 2013;29 (12):1609-15.

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top