【Q】
瀑状胃患者への内視鏡スコープの挿入のコツを教えて下さい。 (東京都 S)
【A】
瀑状胃の内視鏡挿入を難しくする要因は,(1)2段に折れ曲がった特徴的な胃の形状により,通常の視野とは違う方向に管腔が開けるために,胃に入った時点で道に迷ってしまう,(2)スコープを進めようとしてもfornix(穹窿部)方向にスコープがたわんでしまい,スコープが進まなくなってしまう,の2つが考えられます。
通常の症例では,胃にスコープが入ると内視鏡画面6時方向に分水嶺があり,右上方向に管腔が開けます。しかし,瀑状胃の場合,分水嶺が12時方向となり,右方向はfornixとなります(図1)。瀑状胃と知らずに通常通りスコープを進めると,fornixでとぐろを巻いてしまい,いわゆるfornix地獄に陥ってしまいます(図2 a)。
(1)の対策としては,瀑状胃であるとわかった時点で,ある程度送気をして管腔方向を見きわめることが重要です。しかし,ここで問題となるのが(2)です。fornixに空気が溜まってスペースができてしまうと,管腔方向がわかっていてもfornix方向にスコープがたわんでしまい,スコープを奥に進めることができなくなります(図2 b)。
(2)の対策は,スコープのたわむスペースをなくすためにfornixに溜まった空気を脱気してから,見きわめておいた管腔方向にスコープを進めることです。最後にスコープを進める方向が重要になります。スコープを押し進めるときに分水嶺の手前にスコープがたわみはじめると,fornixにスコープが落ち込んでしまい,深部挿入が不可能になります。そうならないためのコツは,小弯沿いを狙ってスコープを進めることです。アップアングルをかけて12時方向の分水嶺を越え,右捻りを加えながら小弯沿いを進みます。そのとき,アップアングルをかけて右に捻るために小弯後壁にスコープ先端がぶつかる形になり,視野がとれなくなります。そこで左アングルをかけて管腔をとらえるようにしてスコープを進めていきます。そうすることで,分水嶺を越えたところでスコープのヒップが胃体部にぶつかり,先進力を得ることができます(図2 c)。
もし途中でスコープがたわんでしまい,前に進まなくなった場合は,食道胃接合部まで戻って丁寧に脱気してやり直すのがよいでしょう。