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糖尿病治療薬服用患者における1型糖尿病の正しい鑑別法は? 【 C-ペプチド・インスリン値測定の妥当性】

No.4774 (2015年10月24日発行) P.63

松田昌文 (埼玉医科大学総合医療センター 内分泌・糖尿病内科教授)

登録日: 2015-10-24

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

SU薬,DPP-4阻害薬など,インスリン分泌を促進する薬剤を既に内服している患者に対して,1型糖尿病であるかどうかを知るためにC-ペプチドやインスリンを測定し,評価することは妥当なのでしょうか。また,食後に測る場合はいかがですか。 (高知県 F)

【A】

保険診療上ではC-ペプチドやインスリンの測定は妥当です。診療上で糖尿病について病名と検査の対応が妥当かという疑問が出ることがあるでしょう。まず,血中ブドウ糖濃度が上昇する状態を評価し,糖尿病の診断基準を満たした場合,治療介入のためにどのような病態かを検討します。そのとき,病態による病名分類をもとに病名を検討することとなります。1型糖尿病であるかどうかについては,基本的には抗GAD抗体で判断します。陽性の場合には1型糖尿病となり,以後はこの検査は行いません。もっとも,弱陽性の場合の取り扱いについては「1型糖尿病」という病名はいったん保留とし,「糖尿病」として診療継続することもあります。
一方,インスリン分泌能は糖尿病で検討すべき検査ですが,病態による病名分類とは基本的には対応していません。2型糖尿病であっても,インスリン依存状態の可能性があります。また,1型糖尿病であっても,インスリン非依存状態である患者は当然存在します。
インスリン分泌能検査としては,血中インスリンの測定や尿中・血中のC-ペプチド測定がよく用いられ,これらはインスリン依存性か非依存性かの鑑別に役立ちます。グルカゴン・糖負荷後や食後の測定も一定の意味を有します。「糖尿病」という診断名がない場合には,C-ペプチドの測定は保険診療では認められません。同時に血液および尿の両方の検体について測定した場合は,血液の場合の所定点数のみを算定します。またインスリン測定との併施は,インスリン異常症などの場合を除き,原則として認められません。
C-ペプチド測定は,インスリン抵抗性についての評価にも用いられ,「糖尿病」で診療に必要な場合には,上記の点を勘案し,測定することを勧めます。
薬物使用の場合には,薬物の影響の上でのインスリン分泌能やインスリン抵抗性の評価となることには留意が必要ですが,1型糖尿病かどうかの評価とはまったく別の目的の検査である点を認識して頂くとよいと考えます。

【参考】

▼ 社会保険診療報酬支払基金:審査情報提供事例.
[http://www.ssk.or.jp/shinsajoho/teikyojirei/files/jirei32.pdf♯page=2]
▼ 松田昌文:臨床検査ガイド. 2015年改訂版. 三橋知明, 他, 編. 文光堂, 2015, p245-9.
【回答者】
松田昌文:埼玉医科大学総合医療センター 内分泌・糖尿病内科教授

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