【Q】
ポリペクトミー前に休止したほうがよいサプリメントはありますか。 (東京都 S)
【A】
下記のような異なった理由から,何種類かのサプリメントは摂取を控えるのが望ましいと想定されます。
(1)残渣や着色のため内視鏡の視野を妨げるもの
ポリープ切除に限らず,蒟蒻や寒天由来のダイエット食品,多量の食物繊維を含むダイエット食品,種子(シード),五穀米,キノコ類,海藻類,クロレラ,鉄剤(ヘム鉄),は内視鏡の視野を妨げる可能性があります。
(2)出血傾向を有するもの,抗血栓薬の作用を増強するもの(文献1)
少量摂取では大きな影響はありませんが,多量摂取は控えることが望ましいものとして,魚油,エイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid:EPA)・ドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid:DHA),多量のビタミンE,ウコン,多量のニンニク,ノコギリヤシ,イチョウ葉エキス,多量のコンドロイチン硫酸,多量のグルコサミン,朝鮮人参(抗血小板薬の作用は増強,ワルファリンの作用は減弱)があります。
(3)ガスを産生し,通電時に爆発をきたす可能性のあるもの
昔,経口腸管洗浄薬としてマンニトールを服用後,ポリープ切除中に大腸が爆発したことにより死亡した症例が報告(文献2) されています。フレーバー添加腸管洗浄薬の一部は,腸内細菌叢によって発酵し,水素・メタンなど可燃性ガスを発生する可能性があります。通電時に引火して爆発しやすいことを危惧する意見と,否定的な意見がありますが,特定のサプリメントによる報告は見当たりません。いずれにせよ,room airよりも炭酸ガス送気下に検査・処置をすれば,ガス爆発を予防できるとされています。
(4)腸炎や潰瘍など大腸粘膜傷害をきたす可能性のある薬剤
厳密にはサプリメントではなく,ポリープ切除とも直接の関係はありませんが,NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)・PPI(プロトンポンプ阻害薬)などでNSAIDs潰瘍や膠原線維性大腸炎,抗菌薬で菌交代現象による偽膜性腸炎や急性出血性薬剤性腸炎,山梔子を含む漢方薬で特発性腸間膜静脈硬化症(静脈硬化性大腸炎)をきたす可能性があります。そのほか,イオン交換樹脂,抗腫瘍薬,分子標的治療薬などによる腸炎もあります。
上記いずれの場合も,サプリメントをどのくらいの期間控えるのがよいかということについて,特に明確なエビデンスはありません。
【文献】
1) 静岡県薬剤師会, 編:スキルアップのためのサプリ・トクホ相談Q & A. 南山堂, 2008.
2) Bigard MA, et al:Gastroenterology. 1979;77(6):1307-10.