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スタチンで副作用をきたした高LDL-C血症の薬剤変更は?

No.4785 (2016年01月09日発行) P.57

佐々木 淳 (国際医療福祉大学大学院保健医療学分野教授/国際医療福祉大学看護学部教授/ももち浜福岡山王病院糖尿病・内分泌センター)

登録日: 2016-01-09

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

高LDL-C血症に対するスタチン投与後に薬疹やCK上昇を生じた場合,他剤へ変更してきましたが,脂質管理目標値に達しない場合があります。あるスタチンで副作用が出た場合,ほかのスタチンへ変更することの薬理学的・臨床的妥当性を教えて下さい。 (和歌山県 T)

【A】

スタチンの副作用への対応に関する質問ですが,まずスタチンの副作用に関する最近の報告について触れます。
スタチンは一般的に安全性の高い薬剤ですが,筋肉障害,肝障害,糖代謝異常,認知機能障害などの副作用が報告されています(文献1)。最近報告されたランダム化比較試験(RCT)のメタ解析では,スタチンはプラセボに比べ筋肉痛,CK上昇,服薬中止の増加はなく,新規糖尿病発症およびトランスアミナーゼ上昇の増加が認められています(文献2)。米国食品医薬品局(FDA)有害事象報告のデータの解析で,横紋筋融解症など筋肉関連および新規糖尿病発症リスクは高強度スタチンで高いことが示されています(文献3)。また,スタチン投与を受け,副作用のため服薬を止めた症例の約半数に対し,服薬していたスタチンとは別のスタチンまたは用量を半分にして投与を再開したところ,1年後に92%がスタチンを継続投与されていたことから,これまで報告されたスタチンの副作用の原因はスタチン以外にあることが考えられています(文献4)。
新規糖尿病発症に関しては,RCTのメタ解析で9%の増加が確かめられています。欧米では,スタチンの心血管イベント抑制効果が糖尿病発症リスクを上回ることから問題になっていませんが,わが国では心血管イベント発症率が欧米に比べて低いことから,十分な注意が必要と考えられます。
スタチンで副作用をきたした高LDL-C血症への薬剤変更については,CKが正常上限の10倍以上では横紋筋融解症を考慮してスタチンを中止して経過を見る必要があり,CKが2倍以下の上昇はそのまま経過を見てよいと思います。スタチン忍容性がない場合は,小腸コレステロールトランスポーター阻害薬のエゼチミブが適応となります。高強度スタチンで副作用が出た場合は,投与量を減らすか低強度スタチンへ変更して経過を見てもよいと思います。さらに脂溶性スタチン(アトルバスタチン,シンバスタチン,フルバスタチン)で薬剤相互作用がある場合は他剤に変更するか,水溶性スタチンへの変更も考慮してよいと思います。
LDL-C値をどこまで下げるかについては,いまだエビデンスは得られていません。『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版』(文献1)から導入されたLDL-C値20~30%低下を目標にすることにより,スタチンの投与量が減り,副作用の発症リスクも低下することが考えられます。

【文献】


1) 日本動脈硬化学会, 編:動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2012年版. 日本動脈硬化学会, 2012.
2) Naci H, et al:Circ Cardiovasc Qual Outcomes. 2013;6(4):390-9.
3) Hoffman KB, et al:PLoS One. 2012;7(8):e42866.
4) Zhang H, et al:Ann Intern Med. 2013;158(7):526-34.

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