【Q】
胃粘膜下腫瘍(submucosal tumor:SMT)における消化管間葉系腫瘍(gastrointestinal stromal tumor:GIST)と非GISTの鑑別診断を教えて下さい。どのような内視鏡所見でGISTを疑えばよいですか。 (大阪府 W)
【A】
胃SMTの中で,最も頻度が高いものは,GISTです。そのため,内視鏡検査でSMTを認めた場合,常にGISTを念頭に置く必要があります。GISTは,腫瘍径が小さく,核分裂像が目立たないものも転移を示すことがあるため,良悪性の断定は困難です。わが国のガイドラインでは,病理組織学的にGISTと診断された場合は腫瘍径によらず手術適応とされています(文献1)。しかし,内視鏡検査でSMTを質的に診断することは困難で,悪性病変を示唆する所見を呈する場合,超音波内視鏡下穿刺吸引生検などが必要になります。ここでは,GISTに比較的特徴的な内視鏡所見について概説します。
(1)局在部位
GISTは,胃U領域に多く認められます。平滑筋腫もU領域に好発しますが,その場合,噴門を取り囲むような楕円形を呈する傾向にあります。
(2)形態・色調
GISTの形態は,小病変ではほかのSMT同様,半球状や丘状を呈します。増大すると多結節状の形態をとることがあり,中心部に陥凹や潰瘍を伴うようになります(図1)。ほかの間葉系腫瘍やカルチノイドでも,大型化すると同様の所見が認められますが,GISTは腫瘍中心部の乏血状態により中心壊死を生じることがあり,それがつながって形成される深い潰瘍はGISTに特徴的な所見です。潰瘍部は腫瘍本体が露出していることもあり,生検が有効です。色調については,胃壁深部から発生する間葉系腫瘍の多くは同色調ですが,粘膜層の基底部から発生するカルチノイドは黄色調となります。
(3)触診
間葉系腫瘍の多くは弾性硬ですが,平滑筋腫はやや軟らかく,いずれも小径の腫瘍では良好な可動性が認められます。一方,カルチノイドも弾性硬ながら可動性に乏しく,異所性膵・脂肪腫などは鉗子で押すと陥凹する,cushion signが陽性となります。
(4)悪性所見
胃SMTには注意すべき悪性所見が存在し(文献2),認めた場合は組織採取を試みます(表1)。経過観察中は,腫瘍の増大にも注意が必要です。GISTの外科切除例を対象とした検討では,腫瘍分裂像数が5/50HPF以上であった病変において,平均4年の観察期間内で腫瘍増大速度は0.4cm/年と報告されており(文献3) ,増大傾向を判断するには数年を要します。
(5)超音波内視鏡所見
超音波内視鏡(endoscopic ultrasonography:EUS)所見はSMT内部の観察や起源・腫瘍径の把握に有用です。しかし,胃壁第3・4層由来の腫瘍における診断精度は43%と報告されており(文献4),EUS単独での鑑別は困難です。特に,間葉系腫瘍はいずれも低エコーで特徴的な所見に乏しく,EUSの意義は腫瘍の鑑別よりも悪性所見の検出に置かれています(表1)。中でも,腫瘍の中心部壊死に伴う空洞形成(無エコー)や出血による高エコースポットは悪性GISTの特徴であり,注意が必要です。
1) 日本癌治療学会, 他, 編:GIST診療ガイドライン2014年4月改訂. 第3版. 金原出版, 2014.
2) Nishida T, et al:Dig Endosc. 2013;25(5):479-89.
3) Miyazaki Y, et al:Eur J Cancer. 2013;49(12):2681-8.
4) Hwang JH, et al:Gastrointest Endosc. 2005;62(2):202-8.