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医薬品副作用被害救済制度の範囲は?【自由診療で適用外のアボルブR使用で有害事象が起きたとき】

No.4803 (2016年05月14日発行) P.59

井上清成 (井上法律事務所 弁護士)

衞藤正道 (井上法律事務所 弁護士)

登録日: 2016-05-14

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

男性型脱毛症(androgenetic alopecia:AGA)治療薬であるザガーロRが発売予定です。同時に厚生労働省から,同一成分であるアボルブRをAGA治療目的で使用した場合,保険給付の対象としないとの通達(保医発0928第1号)がありました。これは自由診療であればAGA治療目的にアボルブRを使用してよいということですか。またこの目的で使用したアボルブRで有害事象が起きたとき,医薬品副作用被害救済制度は適用されるのでしょうか。 (千葉県 K)

【A】

[1]アボルブRの自由診療での使用

ザガーロRは,2015年9月28日,「男性における男性型脱毛症」(AGA)を効能・効果として製造販売が承認されました。同日,厚生労働省から,ザガーロRと有効成分が同一であるアボルブRに関して,アボルブRの効能・効果は「前立腺肥大症」であり,ザガーロRの効能・効果であるAGA治療目的で処方した場合には,保険給付の対象としないとの通知が出ました(保医発0928第1号)。アボルブRの添付文書にも,2015年10月改訂で【保険給付上の注意】が新設され,AGA治療目的で処方された場合には保険給付の対象としないことが明記されました。
上記通知は,アボルブRをAGA治療目的で使用した場合における保険給付の可否に関するもので,自由診療での使用の可否については何も言っておらず,いわば白紙の状態です。すなわち,同通知は,自由診療であればAGA治療目的で,アボルブRを使用してもよいと自由診療での使用を認めるものではありません(逆に,禁止もしていません)。

[2]AGA治療目的の場合の医薬品副作用被害救済制度適用の有無

①医薬品副作用被害救済制度の対象となる健康被害は,承認許可された医薬品を適正に使用したにもかかわらず発生した副作用による疾病(入院治療を要する程度のもの),障害(日常生活が著しく制限される程度の状態のもの)および死亡です。
②保険診療であることは,この副作用被害救済給付の受給要件とはされていませんので,自由診療の場合であっても給付の対象になります。
③しかし,「適正に使用」された場合でなければ,給付の対象にはなりません。
この「適正に使用」は,医薬品の容器や添付文書に記載されている効能・効果,用法・用量,使用上の注意に従って使用されることが基本ですが,個別の事情については,現在の医学・薬学の科学水準に照らして総合的な見地から判断されます。
したがって,アボルブRをAGA治療目的に使用することは,添付文書上の効能・効果以外の目的で使用したことになりますので,原則として,給付の対象になりません。ただし,場合によっては給付されることがあるということになります。

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