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新しい鎮静薬デクスメデトミジン

No.4693 (2014年04月05日発行) P.60

外 須美夫 (九州大学麻酔・蘇生学教授)

登録日: 2014-04-05

最終更新日: 2016-10-26

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麻酔・集中治療領域で用いられる代表的な静注用鎮静薬はプロポフォールとミダゾラムである。両者は手術室や集中治療室以外でも使われているが,副作用として呼吸抑制作用があり,投与中は厳重な監視が必要である。
最近,新しい静注用鎮静薬としてデクスメデトミジン(DEX)が登場し,呼吸抑制の少ない鎮静薬として注目されている。DEXは選択性の高いα2アドレナリン受容体作動薬である。脳内の青斑核に分布するα2受容体に作用してノルアドレナリン放出を抑制し,効果を発現する(文献1)。鎮静作用とともに鎮痛作用も有している。また,せん妄の発生が少ないといった長所もある。
ほかの鎮静薬と違う点は鎮静の質である。患者は鎮静されて就眠するが,刺激により容易に覚醒し(conscious sedation),命令に従うことができる(co-operative sedation)といった特徴がある。
DEXの大きな利点は,なんといっても呼吸抑制作用がほとんどないことである。当初は集中治療領域における気管挿管患者の短時間の鎮静薬として承認されたが,その後24時間以上の長期投与にも適応を広げ,2013年には,局所麻酔下における非挿管での手術および処置時の鎮静が効能・効果に追加された。しかし,副作用として交感神経抑制作用があるため,低血圧や徐脈には注意が必要である。
今後,麻酔・集中治療領域のみでなく,小児の鎮静を含め,幅広い臨床の場での適応拡大が期待されている (文献2)。

【文献】


1) Farag E, et al:Curr Pharm Des. 2012;18(38):6257-65.
2) Koroglu A, et al:Anesth Analg. 2006;103(1):63-7.

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