CCDカメラを用いた胆嚢摘出術に始まる発展
内視鏡を用いた鏡視下手術は,泌尿器科・婦人科の分野では既に1960年代から欧州で行われていた。ドイツではエールリッヒ・ミュエが腹腔鏡下の胆嚢摘出術を1985年に報告している。これらの技術が広く外科手術に応用され始めたのは,フランスのフィリップ・ムレがCCDカメラを用い内視鏡の画像をモニターに映し出し,術野の画像を術者と助手が共有して胆嚢摘出術を行うようになってからである。
世界をリードする日本の内視鏡手術
1990年,日本では山川らにより最初の腹腔鏡下胆嚢摘出が行われた。胃癌では世界に先駆けて1991年,北野が腹腔鏡下胃切除を報告(文献1)している。現在,日本の腹腔鏡下手術のレベルは高く,多くの分野で世界をリードしている。
低侵襲から高精度手術への転換
内視鏡を用いた手術を当初は疑問視するものもあった。しかし,その低侵襲性はしだいに認知され,内視鏡画像の高精細化や,使用するデバイスの進歩とともに技術的な問題も改善されてきた。また,画像を共有することで技術の伝達がより容易になるという,教育的なメリットも大きいことがわかってきた。比較的容易な手術だけでなく,直腸癌や食道癌など技術度の高いものへも普及が進んでいる。当初は低侵襲性ばかりが強調されたが,手術の精度の高さも認識されつつあり,近い将来,多くの手術の主流になると考えられる。
1) Kitano S, et al:Surg Laparosc Endosc. 1994;◆4(2):146-8.