2012年夏から,風疹は未曾有の大流行となった。それに伴い,風疹に感染した妊婦から先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome;CRS)を発症する不幸な赤ちゃん達が2014年1月までに41人も生まれる大惨事となった。
日本のvaccine preventable disease(VPD)への対応に関しては,先進国の中で最低と言える。VPDに対しては集団免疫閾値を超える抗体保有率をワクチンにより確保することが不可欠である。ちなみに,風疹の集団免疫閾値は85%と推測される。わが国は3種混合ワクチンの髄膜炎問題以来,厚生労働省,医師会,父母達が消極的となり,VPDへのワクチン接種を敬遠してきた。
日本の風疹ワクチン接種の歴史は悲惨だった。初めはCRS発生防止を目的としたため,生殖可能年齢の女性を優先するワクチン施策だった。1962~1979年は女子中学生のみで,1979年からは男女を対象としたが医療機関での個別接種のため接種率はきわめて低率であった。1990年からはようやく男女への2回接種となった。この猫の目ワクチン政策の被害者となったのは20~40代の男性であり,今回の風疹感染者の約60%を占めていたことがこのことを実証している。
2014年1月の「特定感染症予防指針案」で「風疹を2020年までに排除」が決定されたが,この実現には20~40代男性に積極的にワクチン接種するしか方策はない。20~40代男性のワクチン必要者を抽出するには,年1回の会社健診に風疹検査を導入することが現実的であると考える。