若年性特発性関節炎(juvenile idiopathic arthritis:JIA)の治療は,生物学的製剤の登場によって飛躍的に進歩した。2003年にTNF受容体-Fc融合蛋白(エタネルセプト)の2年間投与により全病型においてその有効性が示された(文献1)。2008年にはヒト化モノクローナル抗TNF-α抗体(アダリムマブ)とメトトレキサート(MTX)との併用・非併用による多関節型JIAへの効果が報告された。MTXとの併用は非併用に比較して優れており,2年間の投与ではACR Pedi 100%改善率が30%を超える数字が報告された(文献2)。同年にヒト化モノクローナル抗IL-6受容体抗体(トシリズマブ)の全身型JIAに対する効果が報告され,48週間投与におけるACR Pedi 30, 50および70%改善率はそれぞれ98%, 94%, 90%であった(文献3)。この間,抗TNF療法中の悪性疾患発症に対する注意が米国食品医薬品局(FDA)より喚起されたが(文献4),その後の調査で,既に用いられているMTX使用時と有意な差はないことが示された。
上記薬剤はいずれも保険収載されており,従来の治療に抵抗性を示す症例に用いられるようになった。一方,生物学的製剤使用中の感染症やマクロファージ活性化症候群などの問題もあり,日本小児リウマチ学会では,JIAに対して生物学的製剤を使用する医師に対し資格制限を設けている。
1) Lovell DJ, et al:Arthritis Rheum. 2003;48(1): 218-26.
2) Lovell DJ, et al:N Engl J Med. 2008;359 (8):810-20.
3) Yokota S, et al:Lancet. 2008;371(9617):998-1006.
4) Diak P, et al:Arthritis Rheum. 2010;62(8): 2517-24.