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上手なピロリ菌除菌のコツ

No.4720 (2014年10月11日発行) P.50

杉山敏郎 (富山大学消化器造血器腫瘍制御内科教授)

登録日: 2014-10-11

最終更新日: 2016-10-26

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H. pylori(Hp)感染胃炎について,保険診療下で除菌できるようになり,対象者が急増し「上手な除菌」が求められる。一次除菌(PPI+AMPC+C AM),二次除菌(PPI+AMPC+MNZ)のみが承認されているので,これらで可能な限り高い除菌率を得る必要がある。除菌にはパック製剤などもあるが,失敗しないための「上手な除菌のコツ」がある。それには除菌失敗に関わる諸要因を考慮する。
細菌要因としては抗菌薬,特にCAM耐性菌が主要因である。わが国のHpの30%以上が耐性で,現在の一次除菌では70%以上の除菌率を得ることは困難と考えがちだが,上手な除菌で90%前後の除菌率が得られる。第二の細菌要因はCagAの有無だが,わが国ではすべてCagA陽性菌である。ほかに宿主要因として,(1)十分に酸分泌が抑制されているか,(2)PPI代謝の個人差は,(3)服薬コンプライアンスは良いか,の3点が挙げられる。
CAMのHp抗菌活性は胃内pHに依存し,完全に中性域まで酸分泌が抑制されると胃内抗菌活性は130倍増大するため,試験管内の中等度CAM耐性であっても耐性濃度を凌駕し除菌できる。また,わが国の除菌期間は1週間で,PPIは十分な酸分泌抑制に3日間を要するため,実質除菌期間は4日間となる。海外のメタ解析では,PPI 3剤除菌法でも14日間投与で有意に除菌率が向上するので,実質除菌期間の短縮は除菌率に影響する。つまり,速く,かつ,強い酸分泌抑制効果を発揮するPPIの選択が重要となる。PPI代謝の個人差も間接的に酸分泌抑制効果に影響するので同様である。
服薬コンプライアンスも重要だが,コツは除菌の意味,予想される副作用の説明につきる。現状でも一次除菌で90%前後の除菌率が得られると,保険診療内のレジメンで98~99%が除菌できる。

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