過去10年の下垂体腺腫に対する治療法で,手術療法と薬物療法は大きな進歩が認められた。
手術療法の進歩は経蝶形骨洞手術における内視鏡手術の導入である。口唇下粘膜切開による顕微鏡下手術が行われていたが,鼻腔経由による内視鏡手術へと変遷しつつある。内視鏡手術では手術中の可視範囲が拡大し,鞍上部進展腫瘍や海綿静脈洞進展腫瘍に対しての摘出可能範囲が拡大した。また,従来,二期的手術が必要であった大型腫瘍で一期的手術が可能となった。
一方,機能性下垂体腺腫においては薬物療法の進歩が著しい。プロラクチノーマにおいてはカベルゴリンの登場により正常化率の向上が認められている(文献1)。先端巨大症においてはソマトスタチンアナログとしてオクトレオチドのLAR製剤ランレオチドが上市され,薬物療法の第一選択となり,ホルモン正常化率は60%程度である(文献2)。また,数年前よりGH受容体拮抗薬も発売され,ソマトスタチンアナログで制御困難な症例においてもソマトメジンC(IGF-I)のコントロールが可能となった(文献3)。さらに,非機能性下垂体腺腫などによく認められる成長ホルモン分泌不全症に対してはGH補充療法が行われるようになり,患者のQOL向上に寄与している。2009年からは間脳下垂体機能障害が特定疾患治療研究事業対象疾患に指定され,これらの薬物療法が行いやすくなった。
1) Colao A, et al:J Clin Endocrinol Metab. 2004;89 (4):1704-11.
2) Shimatsu A, et al:Endocr J. 2013;60(5):651-63.
3) Trainer PJ:Eur J Endocrinol. 2009;161(Suppl 1):S19-24.