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わが国における重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の現況

No.4748 (2015年04月25日発行) P.55

藤田次郎 (琉球大学感染症・呼吸器・消化器内科 (第一内科)教授)

登録日: 2015-04-25

最終更新日: 2016-10-26

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重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thromb-ocytopenia syndrome:SFTS)は,発熱,血小板減少および白血球減少を呈する疾患であり,中国,日本および韓国などで人獣共通感染症として認識されつつある。SFTSウイルスは新種のウイルス(bunyavirus)であり,マダニによる咬傷を介して感染する。家畜やそのほかの動物が中間宿主であることが多いものの,血液および体液を介したヒト―ヒト感染も報告されている。
SFTSは発熱,頭痛,関節痛,めまい,および気分不良などの非特異的な症状で発症し,これらが1週間持続する。これらの症状に引き続いて,粘膜出血,皮膚の出血斑,血小板減少,肝酵素の上昇,多臓器不全,播種性血管内凝固症候群(DIC)および精神症状などを合併する。中国からの報告によると,致死率は10~30%に上る。ダニに刺された後に,発熱,血小板減少および白血球減少を認めた際には診断を考慮する。
日本では2012年に発生した症例が2013年1月に初めて報告され,その後,九州・四国・中国・近畿地方を中心に患者が報告されている。2015年4月8日現在,感染症発生動向調査では110人のSFTS患者が報告されており,男女比は24:31で,年齢中央値は73歳であった。5~8月の発症例が多く,西日本の15県から報告されている。死亡例は32例であり,死亡率は29.1%である。
治療は対症的な方法しかなく,有効な薬剤やワクチンはない。

【参考】

▼ 国立感染症研究所 [http://www.nih.go.jp/niid/ja/sfts/3143-sfts.html]

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