様々な疾患における分子生物学的な解析の積み重ねにより,サイトカイン,ケモカインなど特定のメディエーターが重要な働きをしていることがわかってきている。重要なサイトカイン,ケモカインをピンポイントで狙い撃ちする分子標的治療薬が開発されつつある。膠原病や悪性腫瘍に対する治療薬が先行しているが,アレルギー領域においても期待される薬剤が開発されつつある。
アレルギー疾患に対する分子標的治療薬として唯一認可されているオマリズマブ(ゾレアR)は遊離IgEに対する特異的抗体である。遊離IgEに選択的に結合し,受容体への結合を阻害することで,IgEを介するⅠ型アレルギー反応を抑制する。本剤は皮下注射で2~4週ごとに投与するが,投与量は血清IgE値と体重によって決定される。局所反応以外の副作用はほとんどない。
機序から考えてⅠ型アレルギー反応を介するアレルギー疾患全般に有効と想定されるが,現在の適応は従来の治療でもコントロールできない重症難治性喘息のみとなっている。高価であるため対象はより有効な症例を厳選する必要があるが,ほかの治療手段がない,好酸球増多を伴うアトピー型重症喘息が良い適応となる。
また,アレルギー反応に重要なサイトカインとされるIL-5,IL-4,IL-13,thymic stromal lymphopoietin(TSLP)などに対する分子標的治療薬も順次開発され,2015年現在,わが国での治験が進められている。
▼ Bice JB, et al:Ann Allergy Asthma Immunol. 2014;112(2):108-15.