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EGFR(上皮成長因子受容体)変異を有する肺癌の治療

No.4754 (2015年06月06日発行) P.48

水内 寛 (近畿大学呼吸器外科教授)

光冨徹哉 (近畿大学呼吸器外科教授)

登録日: 2015-06-06

最終更新日: 2016-10-26

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非小細胞肺癌は,診断時に遠隔転移を認めることが多く,ほかの固形腫瘍に比べ薬物療法の重要性が高いと言える。1990年代にはいくつかの第3世代抗癌剤が上市されたが,その第3世代薬とプラチナ製剤の2剤併用療法の生存期間中央値は1年前後にすぎなかった。
2002年に上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)ゲフィチニブが世界に先駆け日本で承認された。当初より女性,非喫煙者,腺癌,東洋人で効果が高いことが知られていたが,その理由は不明であった。2004年に上述の臨床背景を持つ患者にEGFR活性化変異が高頻度に存在し,これらの患者で薬剤感受性が高いことが示唆された。その後,第3相試験においてEGFR変異で選択した患者では,化学療法よりもEGFR-TKIを用いたほうが無増悪生存期間(PFS)が有意に延長し,かつ全生存期間(OS)が2年超となることが繰り返し示された。
わが国では肺癌全体の約1/3がEGFR変異を有しており,薬物療法を計画する際にはまず遺伝子検査を行うことが強く推奨されている。しかし,初期に奏効するEGFR-TKIも10カ月~1年程度で獲得耐性のため効果がなくなる。この機序の約半数はEGFR遺伝子の二次変異であるT790M変異であり,これにより薬物への親和性が減弱することが知られている。現在,T790Mに特異的に作用する新しいEGFR-TKIの臨床試験が精力的に行われており,近い将来,新しい治療アルゴリズムが開発されることが期待されている。

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