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パワーハラスメントの予防

No.4762 (2015年08月01日発行) P.63

圓藤吟史 (大阪市立大学産業医学・都市環境医学教授)

登録日: 2015-08-01

最終更新日: 2016-10-26

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従業員調査(回答9000人)で,過去3年間に「パワーハラスメント(パワハラ)をしたと感じたり,パワハラをしたと指摘されたことがある」との回答が7.3%のみなのに対し,「パワハラを受けたことがある」との回答が25.3%と乖離し,パワハラを受けても46.7%が「何もしなかった」と回答している(厚生労働省2012年度実態調査)。また,精神障害の労災補償決定件数のうち,約20%がパワハラが原因とされている。以上から,パワハラ対策が労務管理上も産業保健上も必要となっている。
職場のパワハラを類型化すると,(1)暴行・傷害,(2)脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言,(3)隔離・仲間外し・無視,(4)業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制,仕事の妨害,(5)業務上の合理性なく,能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと,(6)私的なことに過度に立ち入ること,にわけられる。
予防のために次のことを行う。(1)トップはメッセージを出す,(2)服務規程や懲戒規程を設ける,(3)従業員アンケートを実施し実態を把握する,(4)教育・研修を実施する,(5)周知する。
解決のためには,(1)相談や解決の場を設置する,(2)行為者に対する研修を含め再発防止のための取り組みを行う。
パワハラは,心の健康の悪化にもつながることから,産業保健スタッフと連携を取ることも重要である。またパワハラは,人権問題やコンプライアンス,コミュニケーションスキル,マネジメントスキルなどと深く関連することから,併せて研修を行うとより効果的になると期待される。

【参考】

▼ 厚生労働省HP:あかるい職場応援団.
[http://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/]

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