生活習慣の欧米化などにより日本人の大腸癌は増加しており,がん死亡の原因として男性で3位,女性では1位である。大腸内視鏡検査(CS)で早期大腸癌を診断・治療すると大腸癌死亡率は低下する。しかし,CSで最も頻繁に遭遇する腫瘍性病変は,腺腫および腺腫性ポリープである。これまでに,米国ポリープ研究(National Polyp Study:NPS)で,ポリープに対する内視鏡的切除術の施行による大腸癌の発生率の低下が示されたが(文献1),それが死亡率を低下させるか否かは不明であった。
そこで,NPSにより大腸癌の死亡率に及ぼす切除術の影響が検討された(文献2)。対象は1980~90年にNPS臨床センターでポリープと診断されたすべての患者であった。中央値15.8年の追跡期間中の大腸癌死亡数を,一般人口における推定大腸癌死亡数と比較すると,内視鏡的ポリープ切除群の標準化大腸癌死亡率比は0.47(95%CI;0.26~0.80)であり,大腸癌死亡のリスクが53%低下することが示された。
以上より,ポリープの内視鏡的切除により大腸癌死亡が予防されるという仮説が支持され,内視鏡的切除の正当性に理論的な根拠を与える報告であった。わが国でも2001年度から,大腸ポリープからがんへの進展を防ぐためにはどの間隔でCSを受診すればよいか,またポリープ切除でどの程度がんを予防できるかの解明を目的として,Japan Polyp Study(JPS)が進行中である。
1) Winawer SJ, et al:N Engl J Med. 1993;329(27):1977-81.
2) Zauber AG, et al:N Engl J Med. 2012;366(8):687-96.