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新たな喘息の病型の理解と個別化医療への期待

No.4773 (2015年10月17日発行) P.51

中島裕史 (千葉大学アレルギー・臨床免疫学教授)

登録日: 2015-10-17

最終更新日: 2016-10-26

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喘息の主病態であるアレルギー性気道炎症は,リンパ球,好酸球,好中球,好塩基球,樹状細胞など,炎症局所へ浸潤した血球系細胞群と,気道上皮細胞,平滑筋細胞,血管内皮細胞など,組織構築細胞との複雑な相互作用により形成される。その惹起には,IL-4,IL-5,IL-13などのTh2サイトカインが中心的な役割を果たしている。さらに近年,気道におけるTh2型免疫応答の始動に気道上皮細胞が産生するTSLP(thymic stromal lymphopoietin),IL-25,IL-33などのサイトカインが関与していることが明らかとなった(文献1)。
TSLPは主に樹状細胞に作用してTh2細胞の分化を促進する。一方,IL-25とIL-33は2型自然リンパ球(ILC2)に作用してIL-5とIL-13の産生を誘導し,Th2型免疫応答を促進する。IL-25はNKT細胞とTh2細胞に,IL-33は好塩基球,肥満細胞,Th2細胞に作用することも示されている。
喘息患者においてヒト抗TSLP抗体(AMG 157)の投与が,抗原誘発による呼吸機能低下と好酸球性炎症を抑制することも報告された。他方,肥満関連の重症喘息の病態にはIL-17を産生する3型自然リンパ球(ILC3)が関与することが報告されている。近年,喘息は単一疾患ではなく,いくつかの異なる病型からなる喘鳴と呼吸困難をきたす症候群であるとの理解が進んでいる(文献2)。それぞれの病型における責任細胞が明らかとなり,その制御法が確立され,個別化医療が達成されることが期待される。

【文献】


1) Lambrecht BN, et al:J Allergy Clin Immunol. 2014;134(3):499-507.
2) Fajt ML, et al:J Allergy Clin Immunol. 2015;135(2):299-310.

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