Baoら(文献1)は,ループス腎炎(Ⅳ型+Ⅴ型)の寛解導入療法として,臓器移植治療で行われるステロイド(GC),ミコフェノール酸モフェチル(MMF)とタクロリムス(Tac)の併用療法(MMF+Tac併用療法)と,従来の間欠的シクロホスファミド点滴静注(IVCY)療法を比較した。6カ月後,12カ月後の完全寛解達成率は,MMF+Tac併用療法群でそれぞれ50%,65%,IVCY群でそれぞれ5%,15%であり,MMF+Tac併用療法群で有意に優れていた。
MMFはプリン代謝拮抗作用薬,TacはT細胞を標的としたカルシニューリン阻害薬であり,それぞれ異なる作用点を有することから,このような併用療法はマルチターゲット療法と呼ばれる。
以前,MMFはわが国では保険適用がなかったため,同じ作用点を持つミゾリビン(MZR)によるMZR+Tac療法が試みられ,高い寛解達成率を得たことが報告(文献2)されている。また,アバタセプト+MMF療法(文献3)などの生物学的製剤を使用した新たな併用療法も試みられており,その有効性が報告されている。わが国でもMMFは2015年7月に保険収載され,今後のマルチターゲット療法のさらなる臨床応用が期待される。
1) Bao H, et al:J Am Soc Nephrol. 2008;19(10):2001-10.
2) Kagawa H, et al:Clin Exp Nephrol. 2012;16(5):760-6.
3) Wofsy D, et al:Arthritis Rheum. 2012;64(11):3660-5.