肥満,高血圧,糖尿病,脂質異常症などのメタボリックシンドローム(Mets)は,前立腺肥大症のリスクファクターである。ウエスト径が95cm以上・高血圧症・糖尿病の症例やHDL-コレステロールが低い症例で前立腺体積が大きい(文献1)ことや,Mets症例のほうが排尿に関する症状(lower urinary tract symptoms:LUTS)が悪く,Metsが前立腺体積のみならず症状の悪化にも関与していることが明らかになっている(文献2)。
高血圧ラットでは膀胱の血流が悪くLUTSが悪化し,ドキサゾシン投与により血流およびLUTSが改善することが確認されている(文献3)。脂質異常症ラットでもLUTSが悪化するが,同様に膀胱血流の低下が関与していると考えられている(文献4)。勃起障害の治療薬として開発されたタダラフィルによるLUTSの改善(文献5)には,下部尿路の血流の増加が関与していると考えられている。
Metsは前立腺体積の増大に関与し,Metsによる膀胱虚血はLUTSの増悪に関与している。
1) Hammarsten J, et al:Prostate Cancer Prostatic Dis. 1998;1(3):157-62.
2) Kupelian V, et al:J Urol. 2013;189(1 Suppl):S107-14.
3) Yono M, et al:Life Sci. 2007;81(3):218-22.
4) Yoshida M, et al:Neurourol Urodyn. 2010;29(7):1350-4.
5) Yokoyama O, et al:Ther Adv Urol. 2015;7(5):249-64.
【解説】
佐々木秀郎:聖マリアンナ医科大学腎泌尿器外科講師