慢性疾患の治療において,明確な数値目標を設けて,その達成をめざして治療を進める“treat-to-target”という概念が提唱され,日常臨床で実践されている。
糖尿病でのHbA1c値,高血圧症での血圧値,脂質異常症でのLDL-コレステロール値がその代表例である。また,炎症性疾患である関節リウマチでも,DAS(disease activity score)という疾患活動性指標を用いたtreat-to-targetが導入されている。これらの治療目標は,疾患による長期合併症を改善するという,エビデンスに基づいて設定されているところが,重要な点である。
一方で,炎症性腸疾患では長らく症状の緩和が治療目標であった。しかし,症状緩和のみでは,長期予後を変えることができないことが明らかになってきた。現在では,内視鏡的に炎症のない状態である「粘膜治癒」を達成することで,病気の自然史を変えることができるのではないか,と考えられている。しかし,内視鏡は侵襲的な検査であり,頻回に施行することができない。そのため,炎症性腸疾患の治療目標として,日常臨床で使いやすい指標を開発するための動きが始まっている(文献1)。
まだ具体的な指標が提唱されているわけではないが,近い将来,treat-to-targetが導入されることは間違いない。
1) Peyrin-Biroulet L, et al:Am J Gastroenterol. 2015;110(9):1324-38.