アルツハイマー型認知症治療薬にはそれぞれ適応の時期がある。承認された重症度に応じて薬剤を選択する必要があり,副作用や効果を適切に評価して,無効であれば,ほかの薬剤に変更したり,併用を検討する。また,治療薬を軽度認知障害(MCI)レベルから開始するのかどうかについてはまだ十分なエビデンスはない。しかし,薬剤の基礎的データからみて,なるべく早期に診断・治療を行うことの有効性は言うまでもない。
アルツハイマー型認知症になると,脳内の神経伝達物質のアセチルコリンが減少し,記憶障害などの認知機能障害が現れる。コリンエステラーゼ阻害薬は,脳内のアセチルコリンを分解するコリンエステラーゼを選択的に阻害することで脳内のアセチルコリンを増加させる作用がある。
ガイドラインに従った治療のアルゴリズムでは,軽度アルツハイマー型認知症の場合,初期の投与薬をまずコリンエステラーゼ阻害薬から1剤選択し,2~3カ月ごとに効果を観察し,6カ月程度観察しても効果がみられない場合にはほかの薬剤に変更する。その際には薬剤の特徴を考慮する。中等度の場合にはメマンチン単独のみならず,ほかのコリンエステラーゼ阻害薬との併用も選択肢として考慮する。また,攻撃や興奮などのBPSDがある場合にはメマンチンを初期から投与することも考慮する。重度であればドネペジル10mgかメマンチン20mgを投与するか,併用する。
薬剤の中止時期については,嚥下障害,誤嚥性肺炎などで食事が摂れなくなったとき,介護施設に入所した場合,病状が悪化したときなどである。また,重度化し,薬剤の効果が期待できないと判断された場合も薬剤を中止する。