ヒトには約24時間周期の体内時計がある。体内時計には,朝の光を浴びることによって調整される中枢時計と,食事を摂ることによって調整される末梢時計があり,この2つの体内時計のリズムがずれてくると,身体の様々な機能がうまく働かなくなる。実際に,ヒトにおいてリズムの乱れにより高血圧,肥満,高血糖などを引き起こすことが確認されている(文献1)。こうした不調の継続により,生活習慣病やがんなどにつながると考えられる。
この問題は特にシフトワーカーやナイトワーカーに関係してくる。実際,シフトワーカーにメタボリックシンドローム,心疾患の罹患が多いことは,今までに多くの研究が報告されていることからも明らかである(文献2,3)。体内時計が乱れる生活を送らざるをえないシフトワーカーは代謝がうまくいかない上,夜食や間食など不規則な食生活を送る傾向にあるので,食事には特に注意が必要である。
「日本人の食事摂取基準(2015年版)」にも「ヒトが有する生物学的な概日リズムがエネルギーや栄養素の摂取や代謝に関わりがあること及び概日リズムと日常の生活リズムとのずれがそれらの代謝に関連する可能性を示唆する」との記載があり,近年の時間栄養学への注目度の高さがうかがえる。
しかしまだ不明な点も多く,さらなる基礎研究,疫学研究が必要な分野である。今後の情報にぜひ注目して頂きたい。
1) 香川靖雄:体力科学. 2014;63(3):293-304.
2) Wang F, et al:Obes Rev. 2014;15(9):709-20.
3) Vyas MV, et al:BMJ. 2012;345:e4800.