現在の脳動脈瘤の治療法は,開頭術(頸部クリッピング)と脳血管内治療(コイル塞栓術)に大別される。一方,脳動脈瘤との直接対峙が困難な例では,末梢血流をバイパスで担保し親血管を外科的,もしくは血管内治療(hybrid)で閉鎖する第三の方法(flow alteration surgery)が提唱されてきた。ドナーとしては,主に橈骨動脈と浅側頭動脈が用いられる。
従来問題とされてきたドナーの血管攣縮は,liquid angioplasty手技(文献1)が確立され,この手術が汎用されるようになった。近年,血行再建併用術では動脈瘤親血管の穿通枝温存を目的とした,周術期抗血栓薬の重要性が指摘(文献2)されている。
血行再建併用術では,バイパスによる血流量低下と血流方向の変化,動脈瘤血栓化が促される。これにより動脈瘤親血管の分岐が過剰に血栓化し,虚血性合併症の原因となる。ステント治療後の抗血小板薬2剤併用療法と同じコンセプトであるが,頸動脈狭窄ステントやコイリングに比して,血行再建併用術では血管内異物がないことから,術前からの抗血小板薬は術後の過剰な血栓化の進行を抑え,周術期虚血性合併症予防が奏効する可能性が高い。出血性疾患に対する抗血栓薬投与でもあり,投与期間,薬剤選択についての今後の検討が待たれる。
1) 上山博康:Neurol Surg. 1994;22(10):911-24.
2) Murai Y, et al:World Neurosurg. 2012;77(1):166-71.