大腸癌のバイオマーカーに求められる役割には,スクリーニング,術後のモニタリング,治療効果予測や治療効果判定,予後予測などがある。
大腸癌のスクリーニングには,便中のヒトヘモグロビンによる便潜血検査が有用である。血清中のCEAおよびCA19-9は大腸癌細胞が産生する蛋白由来の腫瘍マーカーであり,CEAにはスクリーニングの要素もあるが,両者とも主に診断後のフォローに用いられる。p53蛋白に対する血清抗体価は13~27%の大腸癌症例で上昇がみられ(文献1),保険収載されている。
治療効果予測の観点では,腫瘍組織中のKRAS遺伝子の変異が,切除不能大腸癌に対する抗EGFR抗体を併用する全身化学療法の効果予測因子に挙げられている。当初,KRAS遺伝子codon 12/13変異のみの解析であったが,現在では“All(またはextended)RAS”遺伝子解析が可能である(文献2)。
近年,メッセンジャーRNA,マイクロRNAや,大腸癌細胞由来の遊離DNA,または腫瘍細胞そのものを体液中に検出するリキッドバイオプシーという手法が注目されている(文献3)。簡便性,低侵襲性の点で優れており,感度・特異度やコストの問題が克服されれば,個別化医療の一助となりうる。
1) Suppiah A, et al:World J Gastroenterol. 2013;19(29):4651-70.
2) Yoshino T, et al:EBioMedicine. 2015;2(4):317-23.
3) Diaz LA Jr, et al:J Clin Oncol. 2014;32(6):579-86.