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健康経営 【従業員の健康維持・増進は,「大切な資本」に対する積極的な「投資」】

No.4814 (2016年07月30日発行) P.59

加藤貴彦 (熊本大学公衆衛生学教授)

登録日: 2016-07-30

最終更新日: 2016-10-30

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近年,「健康経営」という言葉を耳にする機会が増えてきている。健康経営とは,米国の経営心理学者であるロバート・ローゼンが提唱した概念で,企業の持続的成長を図る観点から従業員の健康に配慮した経営手法のことである。
これまで,企業が取り組んできた従業員の健康管理は,労働安全衛生法の中で「職場における労働者の安全と健康を確保するとともに,快適な職場環境の形成を促進すること」と規定されており,「従業員が怪我や病気にならないように」という受動的な健康管理活動である。
一方,健康経営とは,従業員の健康を企業にとっての貴重な「資産」ととらえ,従業員の健康維持・増進を「大切な資本」に対する積極的な「投資」としてとらえていく能動的な健康管理活動である。すなわち,企業が従業員の生活習慣病やメンタルヘルス不調対策などの健康づくりに積極的に投資することが,従業員の活力向上や労働生産性の向上などの組織の活性化をもたらし,結果的には業績向上や株価上昇につながり,企業の社会的価値を上げていく,という考え方である。
健康経営は,日本再興戦略に位置づけられた「国民の健康寿命が延伸する社会」に対する取り組みのひとつにも挙げられている。2015年3月,経済産業省は,東京証券取引所の上場企業の中から健康経営に優れた企業を「健康経営銘柄」として選定し,発表した。公表することによって,企業の健康経営の取り組みが,社会から適切に評価される仕組みづくりを推進する,というねらいがある。

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