睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)は,居眠り運転による事故が起こるたびに世間から注目されている。しかし,その陰にある心血管系合併症(脳血管障害,冠動脈疾患),夜間の突然死にはほとんどスポットが当たっていない。
SASの最重症型が,肥満低換気症候群(Pickwick症候群)である。SAS患者の7割以上は肥満を伴っているので,SASは肥満症の一部と認識されている。SASはCPAP治療で解決できると思われているようであるが,CPAP治療では効果がない睡眠呼吸障害もある。CPAP治療で効果が不十分な場合,NPPV治療を考慮する必要がある。
肺胞低換気は,慢性の高二酸化炭素血症(PaCO2>45Torr)を認める病態である。肺胞低換気症候群(alveolar hypoventilation syndrome:AHS)は1つの病気ではなく,複数の病態の集合体である。その1つの型は「夜間睡眠中に主に低換気/低酸素血症を呈する」病態〔先天性中枢性低換気症候群(congenital central hypoventilation syndrome:CCHS),原発性AHS〕で,もう1つの型は「夜間睡眠中に主に無呼吸を呈する」病態(CPAP治療では改善しない覚醒時の高二酸化炭素血症を呈する肥満低換気症候群)である。肺胞低換気は覚醒中よりも睡眠中に悪化する。CCHSの原因遺伝子であるPHOX2B遺伝子変異は,延髄腹側炭酸ガス感受性領域の水素イオン(pHに関係),Kチャネル異常をもたらすことが,ノックアウトマウスによる研究で明らかにされている1)。
【文献】
1) Nattie E:N Engl J Med. 2015;373(6):573-5.