当科は内視鏡内科を標榜していますが、消化管癌に対する内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopic submucosal dissection:ESD)を主な業務としています。日頃のスムーズな診療の連携に御礼を申し上げつつ、この度は内視鏡医が何を考え診療しているかをお伝えしたく存じます。
内視鏡的な消化管腫瘍の切除は、1960年代以降、ポリペクトミー、内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection:EMR)と発展を遂げます。しかし、EMRによる一括切除では、病変径20mmまでが限界であるとの報告がされるようになりました。一方、通常の内視鏡観察はもとより、X線透視、拡大内視鏡、超音波内視鏡による検索や、特殊光を用いた狭帯域光観察(narrow band imaging:NBI)などの病態診断が発展し、術前診断能は格段に向上してきました。
結果、リンパ節転移が予測されない粘膜内癌と術前診断された、20mmを超える病変への対応が問題となりました。解決策として、貴科では1990年代から腹腔鏡下手術がはじまり、内視鏡医側でもESDが開発されました。ESDは、内視鏡先端から突出させた電気メスで病変粘膜を切除する手法で、切除後のQOLはEMR同様でありながら、対象病変径に制限はなくなりました。一方、求められる内視鏡操作はさらに高度となり、我々も日々技術向上をめざし精進しております。
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