直腸癌に対する腹腔鏡下手術は,拡大視効果による精緻な操作が可能になり,国内でも急速に広まってきた。しかしながら,そのエビデンスはまだ少なく,2014~15年に海外から報告された4つのRCTでも症例数は限られており,手術成績については十分な検証がされているとは言えない。COREAN trialでは腹腔鏡の3年DFSで非劣性が示され,COLOR-Ⅱ trialでは腹腔鏡の3年局所再発率で非劣性が示されたが,ACOSOG-Z6051 trialや,ALaCaRT trialではCRMの陽性割合において腹腔鏡の非劣性は示されなかった。今後の長期予後に関する報告が待たれる。
一方,わが国では09年,Miyajimaらによる1057例のstage Ⅰ~Ⅳの腹腔鏡下直腸癌手術の集計がなされ,短期成績,中期予後に関する妥当性が報告された1)。13年にはYamamotoらから,臨床病期0~Ⅰの直腸癌に対する前向き第2相臨床試験の短期成績が報告され,495例の登録で開腹移行率が1.6%,合併症発生率が23.9%,縫合不全率が8.3%であった2)。腹腔鏡下大腸切除研究会では,下部直腸(Rb)にかかるstage Ⅱ~Ⅲの下部進行直腸癌1500例を集積した観察研究で,propensity score matchingを使って開腹手術との比較を行い,術後合併症が有意に少なく,中期予後で有意な差を認めないことをASCO2016にて報告した。側方郭清など,わが国独自の治療法の評価や長期成績についても追加の調査を検討しており,今後もわが国からのエビデンス発信が期待される。
【文献】
1)Miyajima N, et al:Surg Endosc. 2009;23(1):113-8.
2)Yamamoto S, et al:Ann Surg. 2013;258(2):283-8.
【解説】
肥田侯矢,*坂井義治 京都大学消化管外科 *教授