(質問者:福岡県 T)
ご質問の症例は,明らかな原発性甲状腺機能低下症です。塩昆布を長期に摂取していたことから,ヨウ素過剰による甲状腺機能低下症を念頭に置く必要があります。
わが国における成人のヨウ素摂取推奨量は130μg/日ですが,海藻類の中でも昆布のヨウ素含量は高く,干し昆布1g当たり2.1~2.4mgのヨウ素が含まれます(日本食品標準成分表 2010)。さらに,腎機能が低下していると尿中へのヨウ素排泄が障害され,ヨウ素過剰になりやすくなります。
本症例は,ヨウ素過剰が甲状腺機能低下症に関係している可能性があるので,まず塩昆布の摂取を2~4週間中止して,甲状腺機能が改善するかどうか,経過観察します。ヨウ素過剰による甲状腺機能低下症の場合は,2週間程度のヨウ素制限でも明らかな甲状腺機能の改善傾向を認めます。甲状腺機能が改善する場合は,そのまま甲状腺機能が正常化していくか,引き続き経過を観察します。甲状腺機能が改善しない場合は,甲状腺ホルモン製剤(LT4)を少量から投与開始します。
本症例は高齢者のため,LT4は少量の25μg/日から開始します。虚血性心疾患がある,または疑われる場合は,虚血性心疾患の増悪をきたさないように,LT4はさらに少量の12.5μg/日から開始します。LT4は血清TSH値の正常化を目標に,2~4週間ごとに25μg/日ずつ増量していきます(12.5μg/日で開始した場合は,まず25μg/日に増量)。
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