肥満には人間の本能・生活の文明化・社会ストレスなど複合的な問題が関わっている
肥満症患者の背景因子の理解なく,口先だけでの外来指導では十分な減量効果は望めない
肥満症患者には個々の病態に即した集学的な肥満症治療が必要である
肥満とは,摂取エネルギーが消費エネルギーを超え,余剰エネルギーが脂肪として一定以上たまった状態である1)。特に内臓脂肪型肥満は糖尿病,脂質異常症(高脂血症),高血圧,冠動脈硬化など生活習慣病の原因となる。したがって,肥満状態の改善や予防は医学的観点からだけでなく,増加する医療費の抑制という社会経済学的観点からも重要である2)。
わが国では病気の発症あるいは悪化に関わり,減量を必要とする肥満状態を肥満症と定義し,積極的な治療介入を勧めている2)。肥満状態の改善や予防には,摂取エネルギーと消費エネルギーのアンバランスを是正する必要があり,栄養・運動・認知行動・薬物・外科治療などが用いられる3)。
肥満症には食欲という人間の本能・生活の文明化・社会ストレスなど複合的な問題が関わっており,単に「痩せればよい」「食べなければよい」「運動すればよい」「痩せ薬を飲めばよい」などのような口先だけでの外来指導では十分な減量効果は望めない。肥満を助長してきた個人の資質・社会医学的背景を理解した上で,患者を個別化し,栄養・運動・認知行動・薬物・外科治療などを集学的に用いる必要がある3)。本稿では肥満症患者を集学的に治療するにあたって必要な肥満の背景をその疫学と病態として述べたい。
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