喘息・COPDオーバーラップ症候群(ACOS)は,喘息と慢性閉塞性肺疾患(COPD)の両方にみられる特徴を有することで診断される1)。しかし,これまで喘息の臨床研究では重喫煙者が除外され,COPDの臨床研究では喘息既往や気道可逆性(+)などが除外されてきたため,ACOSに関する確立された診断基準,治療のエビデンスはないのが現状である。その中で,ACOSが考えられる場合には,まずは吸入ステロイド(ICS)をベースにし,必要に応じて長時間作用性吸入β2刺激薬(LABA)や長時間作用性抗コリン薬(LAMA)を組み入れることが推奨されている1)。また,喘息かCOPDか,あるいはACOSなのか診断に迷う場合,まずは喘息治療としてのICSの使用が推奨されている1)。喘息とCOPDを比較した場合,治療の優先順位としては治療反応性が良い喘息から始めるのがよいと考えられている。
最も重要なことは,喘息の特徴があるならば,ICSを使用しない気管支拡張薬単独による治療を行わないことである。また,ACOS増悪時には,喘息やCOPDの増悪に対する治療と同様に短時間作用性吸入β2刺激薬(SABA)やステロイドの全身投与などを考慮すべきと考えられる。さらに,ACOSにおいてもCOPDと同様に,禁煙やワクチン接種,全身併存症の管理も重要とされている。今後はAC OSを対象とした臨床研究が進むことが望まれる。
【文献】
1) Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease:Global Strategy for the Diagnosis, Management, and Prevention of Chronic Obstructive Pulmonary Disease. 2014.
【解説】
佐藤昭寿 東京女子医科大学内科学第一