慢性腎臓病(CKD)では心血管イベントが多く,逆に心機能の低下は腎障害を起こす。このように心臓と腎臓は密接に関連しており,「心─腎連関」と呼ばれる。心─腎連関のメカニズムとしては,循環動態やレニン─アンジオテンシン系(RAS)といった様々なものが考えられるが,中でも交感神経の関与が注目されている
虚血を主体として起こる腎障害が求心性腎交感神経を活性化し,脳を介して遠心性腎交感神経を活性化し,種々のアドレナリン受容体を介してRAS,Na貯留,血行動態に影響を与えることで,腎機能の悪化や高血圧の発症につながる。また,全身の交感神経を活性化し,心臓や血管にも悪影響を及ぼす。一方で,心機能低下は脳を介して遠心性腎交感神経を活性化し,腎内RASの活性化を介してポドサイトを障害し,アルブミン尿を発症させる
腎デナベーション(RDN)は「HTN-3試験」で,降圧効果は偽手術群と比較して同等であったため,現在は治験が中断されている状態である。しかし,尿蛋白改善効果を含めた腎保護作用を有する可能性がある
近年,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)が心臓の病態と密接に関連している「心─腎連関」が提唱されている。
糸球体濾過量(glomerular filtration ratio:GFR)が60mL/min/1.73mm2より低下しているCKD患者では,CKDが進行するにつれて心血管イベントリスクは上昇し,CKD stage G4以降では,心血管イベントの発生率が約3倍になる1)。また推算GFRが60~75mL/min/1.73mm2と比較的早期のCKDにおいても死亡率が高く2),さらに,腎障害を認めなくても,微量アルブミン尿のみで心血管イベントのリスクファクターとなることがわかっている3)。微量アルブミン尿と心血管イベントの関連を示す明確なメカニズムは不明であるが,strain vesselの障害が微量アルブミン尿を反映している一因であると考えられる。
すなわち,傍髄質の糸球体の輸入細動脈は弓状動脈からの距離が短く,高い圧力にさらされている一方で,皮質表在の糸球体は弓状動脈から離れており,血管への負担は少ない。このため高血圧がある場合,傍髄質の糸球体のほうが障害を受けやすく,微量アルブミン尿は傍髄質糸球体の障害の反映と考えられる。このようなstrain vesselの障害は,脳や冠動脈にも存在しており,微量アルブミン尿が生じている場合は,糸球体障害だけでなく,それ以外の部位のstrain vesselにも障害が及んでいると考えられる4)。
一方で,心機能が低下することで心拍出量や血圧の低下をまねき,急性腎障害の発症リスクとなる。さらに静脈のうっ血や腎性貧血,レニン─アンジオテンシン系(renin angiotensin system:RAS)の活性化などが関連して腎障害を起こすとされる。
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