生活習慣の欧米化と高齢化が進むわが国において循環器疾患を合併するがん患者が増加している。さらに,がん治療の進歩からがん患者の予後が改善する一方で,分子標的薬に代表される新しい化学療法における心血管系副作用(心毒性),がん治療の長期化やがんサバイバーにおける晩期心毒性が問題となっている。このような背景からがん臨床の現場では腫瘍循環器学(onco-cardiology)という新しい概念による診療が注目されている(大阪府立成人病センターは3月25日より大阪国際がんセンターと改称され,わが国初の腫瘍循環器科を標榜する)。
本特集では,実臨床においてぜひ知っておいて頂きたい心毒性とその対応を,わが国の代表的ながん専門施設で実際に腫瘍循環器診療を行っておられる先生方にご解説頂いた。
1 抗がん剤による心毒性への対応─心筋障害を中心に
がん・感染症センター都立駒込病院循環器内科医長 北原康行
がん・感染症センター都立駒込病院臨床検査科医長 説田浩一
2 分子標的薬による心毒性への対応─血管新生阻害薬を中心に
がん研有明病院総合診療部副部長 志賀太郎
3 抗がん剤における長期的な心毒性への対応─がんサバイバーを中心に
大阪府立成人病センター循環器内科副部長 塩山 渉
大阪府立成人病センター循環器内科主任部長 向井幹夫