肥満は糖尿病,高血圧,心血管系疾患,また脳血管障害など,動脈硬化性疾患の原因となっているにもかかわらず,どの国も肥満に対して有効な対策を立てられていないのが現状である。これは,減少した体重を長期間維持することがきわめて困難なためである。減少した体重は,通常3~5年以内にはほぼ元の体重に戻ると言われる。
欧米における現在の標準的肥満治療は,減量プログラムに引き続いて体重維持のプログラムを組み合わせたものとなっており,種々の工夫が取り入れられている。最近,米国肥満学会は米国心臓病学会と合同で,「肥満または過体重の患者は,個別または集団で,少なくとも6カ月間で14セッション以上の包括的なライフスタイル改善プログラムに6カ月以上参加すべきであり,さらに1年以上の維持治療を継続する必要がある」と発表した。このライフスタイル改善プログラムは,認知行動療法がベースとなっている1)。
筆者らは10年前から認知行動療法に基づく肥満治療を実施し,良好な成績を挙げている2)。特に集団療法は費用対効果に優れており,今後わが国でも積極的に取り入れていくべきものと考える3)。
一方で,BMI 40kg/m2以上の高度肥満者は,むちゃ食い障害や精神的問題を抱えている場合が多く,個別的治療が適していると考えられ,外科治療も選択肢に挙がる。
【文献】
1) 野崎剛弘, 他:日臨. 2013;71(2):329-34.
2) Sawamoto R, et al:Obes Facts. 2016;9(1):29-38.
3) 野崎剛弘, 他:日心療内誌. 2013;17(4):220-5.
【解説】
野崎剛弘 九州大学病院心療内科特任講師
須藤信行 九州大学大学院医学研究院心身医学教授