株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

サルコペニアと上部消化管手術【骨格筋の減少は,上部消化管外科手術の治療成績に好ましくない影響を及ぼす】

No.4853 (2017年04月29日発行) P.53

角田 茂 (京都大学消化管外科講師)

坂井義治 (京都大学消化管外科教授)

登録日: 2017-04-25

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

サルコペニアと呼ばれる骨格筋・筋肉(sarco)が減少(penia)した病態が近年注目されている。当初は加齢に伴う病態として提唱されたが,現在では「骨格筋量の低下と筋力あるいは身体能力の低下を併せ持つ病態」と定義されている。

骨格筋量は,主に二重エネルギーX線吸収法やCT/MRIといった画像解析,体組成計による生体電気インピーダンス解析で評価されるが,スクリーニング手段として,下腿の最大周径を測定するといった簡便な評価方法も報告されている。

サルコペニアは,院内感染患者,心臓外科手術,肝移植などの様々な病態・術式における予後不良因子であることが示されており,がん患者においても,サルコペニアは術後合併症の増加や生命予後の悪化と関連することが報告されている。

当院での検討でも,サルコペニアは,食道癌に対する食道切除術後の呼吸器合併症と相関している1)。また,胃癌に対する腹腔鏡下胃全摘術後の手術部位感染(SSI)がサルコペニアと内臓肥満の合併患者に有意に多いこと2)など,骨格筋の減少は上部消化管外科手術の治療成績に好ましくない影響を及ぼすことが明らかになっている。

このため,治療成績向上のためには,これらハイリスク群患者への積極的な栄養学的治療の介入や術前リハビリテーションの導入などが,今後の検討課題と考えている。

【文献】

1) Nishigori T, et al:Ann Surg Oncol. 2016;23 (Suppl 4):524-31.

2) Nishigori T, et al:J Surg Oncol. 2016;113(6): 678-84.

【解説】

角田 茂*1,坂井義治*2 *1京都大学消化管外科講師 *2同教授

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top